研究課題
免疫抑制薬であるミコフェノール酸(MPA)は、イノシンモノホスフェイト脱水素酵素(IMPDH)を特異的に阻害し、血漿中AUCに基づく投与設計が推奨されている。 MPAのタンパク結合率は高いため、血清アルブミン値の変動によって、薬物動態及び薬効が変動することが推察される。そこで本研究では、タンパク結合率がMPAのPK/PDに与える影響をModel & Simulationの手法を用いて定量的に評価するため、無アルブミン血症ラット(NAR)から得られた実験データを用いて母集団PK/PD解析を行った。正常ラット及びNARにMPAを持続点滴し、MPA及びMPAグルクロナイド(MPAG)血中濃度を測定するとともに、末梢血単核球中のIMPDH活性を測定した。MPA血漿中濃度は、2-コンパートメントモデルに当てはめ、MPAは1次消失し、MPAGが生成されると仮定した。また、IMPDH活性は遊離型濃度に基づくシグモイドEmaxモデルを仮定した。遊離型分率は正常ラット及びNARで、MPAについて2%と20%であった。PK/PD同時当てはめによってパラメータを求めた結果、IMPDH活性阻害に対する遊離型MPA濃度のIC50は、52.8 ng/mLで、NARと正常ラットで同一の値を示した。一方、遊離型濃度に基づく薬物動態パラメータは、正常ラットとNARで異なっていたことから、NARにおいては蛋白結合率の変化に加えて、組織移行性や代謝に変動があることが示唆された。さらに得られたPK/PDモデルを用いて、タンパク結合率がMPAのPK/PDに与える影響を検討した結果、タンパク結合率の変化は遊離型AUCを直線的に増加させる一方、IMPDH活性を非線形的に阻害することが明らかとなった。以上の結果、低アルブミン時における血漿中MPA濃度に基づく投与設計はMPAの過剰曝露を引き起こす可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
症例数は順調に増えており、動物データを用いたPK/PD解析についても、良好な結果がでているため。
当初の予定通り、臨床データを用いた母集団PK/PD同時解析を行い、MPAのPK/PDの変動因子について明らかにする。また、抽出された変動因子別の投与量ノモグラムを作成し、臨床にフィードバックする。
今年度中に使用すべき他の経費があり、それらを優先的に使用した結果、次年度使用額が生じた。
今年度経費は、実験用消耗品及び旅費およびその他経費として使用する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Biomed. Chromatogr.
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1002/bmc.3423
Bone Barrow Transplant.
巻: 50 ページ: 312-314
10.1038/bmt.2014.258
http://www.pharm.kyoto-u.ac.jp/research/research-profile/bs/