前年度の動物実験施設の移転に伴い研究計画を変更し、これまで脳内自己刺激行動を用いたRunway法による意欲関連行動に関して行動薬理学的に検討を行ってきた結果の裏付けとなる神経生化学的変化を探索的に検討した。Bromodepxyuridine 200mg/kgを腹腔内投与した翌日から5日間の動機づけ獲得訓練を行い動機づけ行動を獲得したラットの脳を灌流固定しBromodepxyuridineの脳内集積を免疫組織化学的手法により観察した。その結果、中脳辺縁系ドパミン神経の起始核である腹側被蓋野および終末部である側坐核でBromodepxyuridineの集積を認めた。つまり、本動機づけ試験法による意欲行動の獲得によって神経新生が活性化され、新生神経は移動して中脳辺縁系ドパミン神経に変化している可能性がある。しかしながら少数例での探索的検討であったため、今後、例数を重ねて再現性の検討が必要である。 また、抗がん剤治療を行っている患者では臨床的に意欲の低下が生じることに着目し、脳内自己刺激行動を用いた意欲評価モデルにおける抗がん剤投与の影響を評価した。その結果、ドキソルビシン2 mg/kgおよびシクロホスファミド50 mg/kgを週1回、3週間反復投与した場合。報酬獲得行動の低下が認められることが明らかになった。また、中脳辺縁系ドパミン神経機能を免疫組織化学的手法を用いて検討した結果、これら抗がん剤の投与によって脳内側坐核におけるTyrosine Hydroxylaseの発現量低下が明らかになった。
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