研究課題/領域番号 |
25460217
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
藤井 聡 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90291228)
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研究分担者 |
尾関 哲也 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (60277259)
磯貝 善蔵 独立行政法人国立長寿医療研究センター, その他部局等, その他 (20285208)
岩城 壮一郎 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (60399962)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高齢者 / 皮膚潰瘍 / 褥瘡 / 糖尿病 / 分泌型miRNA / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
褥瘡等の慢性創傷の浸出液には外科的急性創傷に比べマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-9が多量に含まれており、そのコラーゲン分解活性も高くなっている。過剰なMMP-9は褥瘡の治癒の遅延や臨床的な重症度とも関係している。軟膏基剤マクロゴールはMMP-9のin vitroの検討からMMP-9の活性を阻害することを明らかにした。また、平成25年度の成果をもとに、平成26年度は褥瘡浸出液を医療用ガーゼから回収して分泌型miRNAの動態を解析した。また、分泌型microRNAの動態について喫煙者で興味深い知見を得た。喫煙者では閉塞性血管炎が発生しやすくその結果虚血性潰瘍をきたしやすい。喫煙者では8週間の禁煙により血管機能が回復するとともに末梢血のmiR-126レベルが回復することを明らかにした。禁煙による血圧の低下とmiR-126上昇は血管機能を回復する鍵となる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MMP-9活性を見るin vitroの評価系でマクロゴール軟膏はクローニングで得たMMP-9の吸光度を低濃度から低下させ、さらにMMP-9酵素活性を抑制した。阻害様式は現在解析中である。マクロゴール軟膏と混合したMMP-9 でウエスタンブロッティングを行った結果、マクロゴールはMMP-9 の泳動を阻害したのではなく、活性そのものを抑制したことが示唆された。また、褥瘡滲出液を含んだガーゼから滲出液を回収した。この滲出液からRNAを抽出してリアルタイムRCRを行いmiR-126の発現動態を解析した。滲出液におけるmiR-126の発現は、褥瘡初期から中期にかけて上昇がみられた。その後は後期に向けて発現が減少する傾向がいずれのサンプルからも得られた。miR-126の発現の増減はMMP-9の発現に影響を与え、組織リモデリングに関与していることが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
いままで軟膏の基剤は薬効を持たない賦形剤と言われてきた。しかし、今回の研究結果から、基剤のうちマクロゴールは創面において薬理作用をもつことが明らかとなった。いままで褥瘡など慢性創傷に対する外用薬は薬効成分や吸水性を考慮して選択されていた。今回の結果から外用薬による治療法の選択に酵素活性の制御という新たな方向性を加える事ができた。慢性創傷の外用薬は創面における基剤の薬理作用も考慮することで、よりよい治療を提供できるようになる。今後の研究により、マクロゴールの使用が速やかな創傷治癒へ貢献する機序をさらに明らかにしていきたい。滲出液miR-126の発現の増減はMMP-9の発現に影響を与え、組織リモデリングに関与していることが考えられるため、miR-126発現の制御が新たな治療標的となる可能性がある。In vitro培養細胞の系で、miR-126のノックダウン、過剰発現を行いMMP-9や血管新生、血流に関与する因子の発現変動を検討する。また、喫煙により低下したmiR-126は禁煙により回復することから、閉塞性血管炎などの皮膚病変におけるmiR-126発現の検討をすすめて行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費における実験用プラスチック器具、試薬の使用におけるコストダウン努力により19,936円が残った。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の物品費の試薬代金に回す予定である。
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