研究課題
糖尿病に合併する慢性皮膚創傷の浸出液には外科的急性創傷に比べ、マトリックスメタロプロテアーゼ (MMP)-9 が多量に含まれる。コラーゲン分解活性も高い。過剰なMMP-9は創傷治癒の遅延や臨床的な重症度とも関係する。我々は今年度、in vitro の検討から軟膏基剤マクロゴールによるMMP-9活性の阻害様式を明らかにした。従来、軟膏基剤は薬効を持たない賦形剤と言われてきた。しかし、今回の研究結果は基剤のマクロゴールは創面においてMMP-9阻害という薬理作用をもつことを明らかにした。外用薬による治療法の選択に酵素活性の制御という新たな方向性を加える事もできた。褥瘡など慢性創傷に対する外用薬は薬効成分に加えて吸水性を考慮して選択される。吸水作用も考慮することで、よりよい治療を提供できるようになる。今年度、我々は側鎖にアリル基を持つPEOを用いた新規軟膏基剤を開発し、側鎖を架橋させたゲル基剤の吸水性に及ぼす影響を明らかにした。ユーパスタと同等の吸水力をもち、吸水作用はユーパスタより長時間続き、ユーパスタより溶解しにくいという特性をもつ。今後の新規軟膏基剤の開発により、高齢者の慢性皮膚潰瘍や創傷がより速やかに治癒する可能性をさらに検討していきたい。滲出液miR-126の発現の増減はMMP-9の発現に影響を与え、組織リモデリングに関与していると考えられ、miR-126発現の制御は新たな治療標的となる可能性がある。低酸素環境が血管内皮細胞由来 miRNA と血管内皮機能に与える影響の解析を進め、in vitroの培養細胞の系であるが、miR-126のノックダウン、過剰発現を行いMMP-9や血管新生、血流に関与することを示した。また、喫煙により低下したmiR-126は禁煙により回復することから、閉塞性血管炎などの皮膚病変におけるバイオマーカーとしてのmiR-126発現の検討をすすめて行く。
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