研究課題/領域番号 |
25460218
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
木村 和哲 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00423848)
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研究分担者 |
前田 康博 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (60275146)
堀田 祐志 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (90637563)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 5α還元酵素阻害剤 / 勃起不全 / 心血管機能 / 内皮機能 / テストステロン / ジヒドロテストステロン / 前立腺肥大症 |
研究概要 |
5α還元酵素阻害剤(5ARI)は、テストステロン(TEST)をジヒドロテストステロン(DHT)へ変換する酵素を阻害し、男性型脱毛症や前立腺肥大症に臨床使用されている。5ARIはTEST量を低下させず、男性性機能には影響しないと考えられていた。しかし、近年の欧米の性機能学会において高頻度(38%~73%)に勃起不全(ED)が報告され、この原因として一酸化窒素(NO)の産生低下が示唆されている。このままNOの産生が低下した状態が続くと、EDのみならず心血管障害などの重大な副作用も引き起こしかねない。そこで、薬理学的、分子生物学的手法により、DHT低下とNO産生、勃起機能および血管系へ与える影響を明らかとし、5ARIによる副作用の予防策を提案することを目的とした。 平成25年度計画では、5ARIであるデュタステリドをラットに投与し、5~500 micro- g/kg /day の投与量で4~20週間の観察期間を設け、ラットの勃起機能および心血管機能への副作用の影響を比較検討する計画を立てた。今回用いるデュタステリドは高額な試薬であるため、デュタステリドの原末提供を製薬メーカーに依頼し、承認・受理後に原末の提供を得て実験を開始した。 また本研究を遂行するにあたり、心血管機能を薬理学的に評価するため、微小標本マグヌス実験装置を購入した。薬物投与モデルの実験に先駆けて、Wistar/STラットの大動脈を用いて予備実験を行ったところ、良好な反応を得ることができ、薬物投与モデルの作成を開始するに至った。 現在、Wistar/STラットに対して、デュタステリド投与をしており、海綿体内圧測定法を用いたラットの勃起機能評価、ならびに薬理学的手法を用いたラットの陰茎海綿体および大動脈の血管内皮機能評価を行っている。今後、ラットの組織を摘出し、分子生物学的手法によるさらなる検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究を行うにあたり、今回用いる5α還元酵素阻害剤(5ARI)であるデュタステリドは高額な試薬であるため、デュタステリドの原末提供を製薬メーカーに依頼した。しかし、申請は製薬メーカーのイギリス本社に対して行ったため、申請の過程で受理・承認までに3か月間費やす必要があった。また、承認後に製薬メーカーにデュタステリド原末の在庫が不足している状況であり、すぐにはデュタステリド原末の用意ができないとの連絡があり、最終的には5か月間待機することになってしまった。また、原末の手配が完了後もイギリスより輸入することになったため、国内への輸入手続きにも時間を要してしまった。 投与開始までの間、今回新たに購入した微小標本マグヌス実験装置の予備実験を開始した。Wistar/STラットの大動脈を用いて張力測定を行ったところ、問題なく血管内皮機能を測定することが可能であった。また、当研究室において作成している別の血管内皮機能障害モデルラットの大動脈を用いての検討も行ったところ、従来用いていたマグヌス実験装置と同様の結果を簡略した方法で得ることができることを確認した。さらに従来の装置よりも必要な組織量が少なく、別の実験にサンプルを保存できることが可能となった。 以上の理由により、実験の開始が遅れてしまったが、今後は効率的に実験を進めていけるよう、工夫して取り組みたい。
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今後の研究の推進方策 |
現在、11週齢の雄性Wistar/STラットに対し、5α還元酵素阻害剤(5ARI)であるデュタステリドを投与し、ラットの勃起機能および心血管機能の評価を行っている。 今後、すべての海綿体内圧測定法を用いたラットの勃起機能評価、ならびに薬理学的手法を用いたラットの陰茎海綿体および大動脈の血管内皮機能評価を行い、データ解析を行う予定である。 測定終了後にラットの血液採取や組織摘出を行い、PCR法やウエスタンブロッティング法を用いてERK1/2やSIRT1、EPCなどの血管機能障害と関連する物質を分子生物学的に検討し、Masson's trichrome染色法や免疫染色法を用いた組織学的検討、ultra high performance liquid chromatography - tandem mass spectrometry(UPLC-MS/MS)を用いて血中や組織中のNOレベルやADMAレベル、グアニル酸シクラーゼや環状グアノシン一リン酸(cyclic guanosine monophosphate; cGMP)、環状アデノシン一リン酸(cyclic adenosine monophosphate; cAMP)などのNO-cGMP系やNO-cAMP系の物質などの生化学的パラメータを分析する予定である。 本研究はデュタステリドの入手に予想以上の時間時間を要してしまったため、今後予定している分子生物学的な評価は、測定物質に優先順位を設け、必要と考えられるものから順次、測定を行っていく予定である。
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