研究課題/領域番号 |
25460219
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
工藤 賢三 岩手医科大学, 薬学部, 教授 (30275531)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 可視光反応型光触媒 / 抗がん剤 / 抗がん剤分解 / 被曝 |
研究実績の概要 |
これまでに、紫外線を光源として反応する二酸化チタンを主体とする光触媒を用いて、抗がん剤の分解能を報告してきた。当該研究では、蛍光灯などの可視光にて反応する可視光反応型光触媒の分解効果を検討している。各種抗がん剤の水溶液をステンレス板に負荷し、これに可視光反応型光触媒を噴霧し、蛍光灯下に放置、HPLCにて定量した。これらの結果から、シクロホスファミドやパクリタキセル、5-フルオロウラシル、メトトレキセート、イリノテカン、シタラビンなどの抗がん剤の分解能を確認し、この結果から可視光反応型光触媒が、通常の室内にある蛍光灯下においても一定の抗がん剤分解能があることを認めた。これは「医療環境中に汚染された抗がん剤を可視光応答型光触媒にて分解する試み」佐藤淳也, 菊地聡美, 工藤賢三YAKUGAKU ZASSHI 134(8) 909-914 (2014) として公表した。 我々は、臨床の現場において、安全キャビネットの清掃時に適用しやすいように光触媒の剤形を、光触媒主成分粒子を懸濁液としたスプレー剤として適用してきた。しかし、これらスプレー状光触媒剤を臨床応用するには、スプレー噴霧後の拭き取り操作の必要性、乾燥した触媒粒子の吸入毒性への懸念があり、これに代わる光触媒の適用方法を模索してきた。今年度は、比較的付着性の良い光触媒のコーティング剤が作成できたので、これについても抗がん剤の分解能を同様に検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H26年度の検討にて、(株)日本曹達の協力のもと可視光反応型触媒のコート剤を試作した。これは、ステンレス板上に塗布し、複数回の拭き取り操作にても触媒機能を維持できる適用剤形である。現在、その触媒剤形による各種抗がん剤分解能を評価中であり、これまでのところシクロホスファミドおよび5-FUに対して一定の分解能を認めている。 予定では、分解産物の変異原性試験を行う予定であったが、他の適用方法を検討する必要があったため、予定を変更して可視光反応型触媒のコート剤の分解能を評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度である現在、可視光反応型光触媒のコート剤にてパクリタキセルなど他抗がん剤での分解能を評価を行っている。当該研究における他の検討課題は、光触媒の分解能が抗がん剤の被曝毒性自身を低減させているかにある。つまり、光触媒による抗がん剤分解産物の変異原性を評価する計画となっている。上記の抗がん剤について、光触媒コート剤での分解率を高速液体クロマトグラフィーにより評価後に、計画していた分解産物の変異原性試験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
可視光反応型光触媒を利用した抗がん剤分解の検討は行い、学会発表、論文の投稿は終了している。今年度、他の適用方法であるコート剤の抗がん剤の分解能の検討を行った。研究予定である可視光反応型光触媒による抗がん剤分解物の変異原性の評価が行われていないことが、次年度使用額が生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度は、最終年度であるが、研究予定である可視光反応型光触媒による抗がん剤分解物の変異原性の評価を実施することで繰越を使用する予定である。
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