研究課題/領域番号 |
25460220
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研究機関 | 東北薬科大学 |
研究代表者 |
菅野 秀一 東北薬科大学, 薬学部, 准教授 (00347907)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アセトアミノフェン / 酸化的ストレス / 薬剤性肝障害 / mRNA / リアルタイムPCR / 抗酸化酵素 |
研究実績の概要 |
昨年度は、酸化的ストレスを介して肝障害を生ずるモデルとしてアセトアミノフェンをマウスに投与し(ddY系雄性マウス、n=150)、肝毒性の発現には個体差を生じることを確認した。そこで本年度は、あらかじめ採取した検体(血液よりtotalRNAを抽出し、cDNAを合成)を元に、リアルタイムPCRにて遺伝子発現の変動を検出し、肝毒性発現との相関について解析を行った(Genotyping)。また、アセトアミノフェンの血中濃度を測定するため、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて個々のマウスにおけるアセトアミフェン血中濃度を測定した。 得られた結果として、アセトアミノフェン投与後、約6割のマススに肝障害を発症し、その内で死亡率は約1割であった。肝障害の有無に関わらずアセトアミノフェン血中濃度の有意な差は認められなかった。検出した遺伝子群として酸化的ストレスの発現に深く関与することが知られているものを過去の文献より選択し、候補遺伝子群の探索を行った。アセトアミノフェン肝障害未発症群と発症群、更には重症群と死亡群に分けてmRNAの発現を解析すると、IL-1βやIL-10は死亡群において有意に発現が高く、Transthyretin(Ttr)やMetallothionein 1(Mt1)の発現はAA肝障害発症群で有意な上昇を示し、Glutathione peroxidase 3(Gpx3)は明らかに低下していた。他の因子には有意な差は認められなかった。以上のことから、マウスにおけるアセトアミノフェン肝障害の発現には、血清中のmRNAとしてIL-1β, IL-10, Ttr, Mt1, Gpx3は有用な指標となる可能性があるものと示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
候補遺伝子群より感受性の規定因子を特定して挙げられるものと推測していたが、予想より変動していた候補遺伝子群が多く、規定因子を一つに限定することができなかった。その反面、過去にアセトアミノフェンの肝毒性に対して深く関与する遺伝子群の変動が、我々の検討では影響が見られないものも存在したため、既に報告されている文献の結果とは符号せず、実験結果の解釈に時間を要した。これらの結果を元に候補遺伝子群の遺伝子組み換え体を作製してin vitroへの実験へと進展する予定をしており、今後の検討を行う上での重要なデータであると考える。また、アセトアミノフェンの血中濃度を測定する際、当教室で所持していたHPLCの故障が認められ、機器のメンテナンスや測定法の確立に大きく時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
In vivoにおける検討として、空腹によりアセトアミノフェンの肝毒性は増強することが知られているため、絶食マウスにおける遺伝子発現の変動とアセトアミノフェン肝毒性の影響を精査する予定である。本結果は、我々の実験データより得られたアセトアミノフェン肝毒性に関与する感受性の候補遺伝子群が空腹により影響されるか否かを証明する結果となると考える。さらにIn vitroの実験として、候補遺伝子を標的とした遺伝子組み換え体の細胞株を作製し、変異細胞株を樹立する。これら標的タンパク質を発現または抑制する技術については、これまで当教室で行われてきた経験と実験手技を用いることにより、作成の円滑化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度後半よりIn vitroの実験系に着手する予定であったが、当初の計画より若干の遅れが生じていたため、実験消耗品として細胞培養用品(ディスポーザブルフラスコ・ピペット等)の購入ができなかった。また、これまで得られた知見をまとめて論文発表をする予定であったが、当該年度内において論文投稿ができなかった(現在執筆中)。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度内に計画していたIn vitro実験系を次年度に行うため、消耗品として実験に必要な細胞培養用品を大幅に購入する。得られた結果をまとめ、論文投稿を行う予定である。
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