研究課題/領域番号 |
25460224
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
福島 健 東邦大学, 薬学部, 教授 (00272485)
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研究分担者 |
西口 慶一 東邦大学, 薬学部, 助教 (60459823)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 統合失調症 / D-セリン / リスペリドン / D-アミノ酸酸化酵素 / 9-ヒドロキシリスペリドン |
研究実績の概要 |
統合失調症患者にD型アミノ酸の1つであり、脳内NMDA受容体コ・アゴニストであるD-セリンを統合失調症の治療薬(抗精神病薬)とともに投与することで、陰性症状が改善された報告がある。そこで本研究では、同患者に処方される抗精神病薬にD-セリンの有効性(生体内濃度)を高める作用の有無を実験動物(ラット)を用いて検討した。第2世代抗精神病薬リスペリドン(Ris)とD-セリンをラットに併用投与し、ラット血漿中D-セリン濃度推移をHPLC-蛍光検出法を用いて調べた。RisおよびD-セリンを併用投与した結果、D-セリン単独投与時に比べ、D-セリンの血漿中濃度の有意な上昇が見られ、Risの投与量に依存して、血漿中D-セリン濃度-時間曲線下面積が上昇した。また、ラットが生きている状態で脳組織内での物質変化を追跡できる脳マイクロダイアリシス実験により、ラット脳組織においても、Risの併用投与によりD-セリン濃度が上昇した。 RisがD-セリンの生体内分解を抑える可能性を調べるため、生体内でD-セリンを代謝分解するD-アミノ酸酸化酵素(DAO)の活性を評価する測定系を試験管内に構築した。その結果、RisにDAO活性阻害作用が弱いながらも認められ、また、Risの主代謝物である9-ヒドロキシRisにもRisと同程度であったが、DAO活性阻害作用が見られた。Risを投与後のラット血漿中Risおよび9-ヒドロキシRis濃度をLC-MS/MS法を用いて調べた結果、Ris、9-ヒドロキシRisともに血漿中に長い時間、存在することがわかり、Risおよび9-ヒドロキシRisがDAO活性を阻害し、D-セリン濃度が高く維持されることが推測された。一方、Risの投与後、腎臓及び小脳のDAOmRNAの発現減少はなかった。 本研究により、RisとD-セリンを統合失調症患者へ併用処方する上で臨床上重要な知見が得られた。
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備考 |
東邦大学薬学部 薬品分析学教室ホームページ http://www.lab.toho-u.ac.jp/phar/Analchem/index.html
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