研究課題/領域番号 |
25460227
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
加賀谷 肇 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (00642969)
|
研究分担者 |
植沢 芳広 明治薬科大学, 薬学部, 准教授 (90322528)
野澤 玲子 (石井 玲子) 明治薬科大学, 薬学部, 講師 (60257144)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | モルヒネ / コンパニオンドラッグ / 定量的構造活性相関 / 機械学習 / 血液脳関門 / トランスポーター / 鎮痛効果 |
研究概要 |
【目的】モルヒネの血液脳関門(BBB)透過を制御し、中枢への移行性を向上させる目的で、BBBバリア機能を阻害するとともに取り込みトランスポーターには影響を与えない併用薬の探索を計画した。オピオイドの鎮痛効果には大きな個人差がある。BBBを介する中枢移行性はその個人差を決定する重要な要因である。BBBの低分子バリア機能を担うP糖タンパク質(P-gp)、および薬物の取り込みに関与するOATP等のトランスポーターは、モルヒネ等のオピオイドの中枢移行に関与する可能性が報告されている。そこで、モルヒネおよび活性代謝物(M6G)の脳組織移行性に焦点を当て、鎮痛効果を向上し個人差と副作用を軽減する新規な併用薬のリード化合物を探索するために、これらのトランスポーターを制御する併用薬の探索を計画した。 【方法】薬物相互作用データベースに掲載された化合物のOATP1A2に対する基質性およびP-gpに対する阻害活性の報告例を網羅的に収集した。次に、収集した化合物の化学構造情報から、脂溶性、極性、分子体積、水接触可能表面積等の種々物理化学的性質および、官能基数、構成原子数、分子の形状等の種々構造的特徴を計算機化学的に算定した。これらの化学構造情報と基質性もしくは阻害活性の関係を、線形もしくは非線形な統計手法・機械学習手法を用いて解析することにより、予測モデルを構築した。 【結果・考察】生理活性と構造記述子の間に線形性を仮定する統計手法と比較して、多様な構造記述子のパターンと生理活性を結びつける機械学習法は高度な予測性能を示した。すなわち、OATP1A2の基質性の予測にはサポートベクターマシン回帰法が、P-gpの阻害活性にはランダムフォレスト回帰法が、それぞれ良好な成績を与えた。本検討で構築された予測モデルは、モルヒネのコンパニオンドラッグとして良好な性能を有する化合物の探索に有用であると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究では、モルヒネの中枢移行性を改善するためのコンパニオンドラッグの探索を目的としている。このためには、大規模な商用化合物データベースから候補化合物を効率的に探索する必要がある。初年度は、モルヒネの中枢移行性に対する影響が未知の化合物を対象として、血液脳関門に発現するトランスポーターの基質性および阻害活性を正確かつ簡便に予測するためのモデルの構築を目標とした。機械学習法の適用によりP-糖タンパク質阻害活性などのモルヒネ中枢移行性の制御に重要なトランスポーターの制御能を予測することに成功したことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度に構築した血液脳関門発現トランスポーターに対する基質性・阻害活性予測モデルを用い、商用化合物データベースからコンパニオンドラッグ候補分子を探索する。候補分子中より、毒性を持たず良好な動態特性を有する化合物を選別するために、薬物動態パラメーター予測モデル等を構築し適用する。その後、選別された候補化合物の併用時におけるモルヒネの中枢移行性および鎮痛活性を動物実験によって確認する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
初年度は計算機科学的研究に注力したため、オピオイドの中枢移行性、鎮痛活性の測定のための予備実験に必要な実験動物費、試薬その他の消耗品費の使用量を調整した。 次年度以降は、計算機科学的研究とともにオピオイドの中枢移行性および鎮痛活性の測定系の確立のために、ソフトウエアの年間ライセンス費用とともに、実験動物、試薬、器具等への支出を予定している。
|