研究課題
【目的】モルヒネの中枢移行性の向上を目的として、血液脳関門の低分子物質に対するバリア機能への阻害活性を有し取り込みトランスポーターには影響を与えない併用薬の探索を計画した。オピオイドの鎮痛効果における大きな個人差は、脳血管関門を介する中枢移行性の相違に起因すると考えられる。P糖タンパク質および有機陰イオントランスポーターOATPは、モルヒネ等のオピオイドの中枢移行に関与する可能性が指摘されている。そこで、モルヒネの鎮痛効果を向上するとともに個人差と副作用を軽減する新規な併用薬のリード化合物を探索する目的で、モルヒネ及びモルヒネ活性代謝物であるモルヒネ-n-グルクロン酸抱合体の脳組織移行性に焦点を当て、これらに対するトランスポーターを制御することのできる併用薬の探索を計画した。【方法】平成27年度に定量的構造活性相関および機械学習法を用いて構築したP糖タンパク質輸送能阻害活性予測モデルおよびOATPに対する基質性予測モデルを併用薬候補物質の探索に使用した。さらに、両トランスポーターに対するディープラーニング等を用いた予測モデルを新規に構築した。これらの両トランスポーター予測モデルを用いて既知医薬品等生理活性/薬理活性化合物データベースを探索することにより、P糖タンパク質を阻害しOATP輸送に影響を与えないモルヒネ併用薬シード化合物を探索した。【結果・考察】ディープラーニングおよびブースティング人工ニューラルネットワークは両トランスポーターに対する良好な予測モデルの構築に最も有効な機械学習法であった。本モデルを用いて上記化合物データベース掲載構造を評価することにより、高P糖タンパク質阻害活性と低OATP基質性を併せ持つ多様なモルヒネ併用薬シード化合物候補の抽出に成功した。抽出された化合物には臨床利用されている医薬品が数種類含まれていることから、速やかな臨床応用が期待される。
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