研究課題
本研究は、医薬品副作用データベースを活用し、重篤な副作用情報を解析することによって、より安全な薬物治療に貢献することを目的としている。さらに、in vitro系を用いた副作用メカニズムの解明を目指すものである。本年度はこれまでの薬剤性腎障害に関する研究に加え、漢方薬の抑肝散による副作用解析についても研究を進めた。近年、認知症患者の周辺症状(BPSD)である妄想、幻覚、異常行動などの様々な精神症状や問題行動に対する抑肝散の臨床応用が増加している。PMDAによる副作用情報を解析した結果、抑肝散による副作用発現の男女比は1:2.1であった。また、80代での発現頻度が最も高く全体の56.9%を占めた。最も多く報告された副作用は低カリウム血症であり、次いで偽アルドステロン症や間質性肺炎であった。副作用の発現時期は投与開始後3ヶ月以内が27名、3ヶ月以降1年以内が18名、1年以降が5名であった。本研究と洛和会音羽病院における抑肝散エキス顆粒使用患者を対象とした研究の結果から、高齢者では副作用の発現が多く報告されているため、高齢者に対して抑肝散を投与する場合は特に注意する必要があるといえる。また、PMDAに報告された副作用情報では、医療施設での症例と比較して低カリウム血症の症例数が偽アルドステロン症や間質性肺炎に対してかなり低かった。このことから低カリウム血症は報告されないケースが多いことが懸念される。抑肝散に関する研究成果は、データベース解析の結果を臨床情報と比較した貴重な情報であると考える。以上、本年度までの研究において副作用データベースの効率的な解析法の確立と大規模解析を遂行し、また臨床情報との比較解析をおこなった。この研究成果は、さらなる副作用解析とメカニズム解析への発展につながると考えられる。
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European Journal of Clinical Pharmacology
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