研究課題/領域番号 |
25460232
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
服部 尚樹 立命館大学, 薬学部, 教授 (80288828)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | TSH / 潜在性甲状線機能低下症 / 自己抗体 |
研究実績の概要 |
【目的】マクロTSH(甲状腺刺激ホルモン)はTSHがIgGと結合した100kDa以上の大分子TSHであり、クリアランスの低下から高TSH血症をきたす。血中TSH値は甲状腺ホルモンによる薬物治療方針の決定に極めて重要であり、今回マクロTSHの病態生理を明らかにすることを目的とした。 【方法】潜在性甲状腺機能低下症患者1467人(女性599人、男性868人、年齢64.5±17.8歳)を対象に、ポリエチレングリコール(PEG)法でマクロTSHをスクリーニングし、ゲル濾過法にてマクロTSH血症の確定診断を行った。マクロTSH陽性検体について、FRTL-5ラット甲状腺細胞を用いたTSH生物活性などを用い、マクロTSHの性質を検討した。 【結果】1467人中20人(1.36%)にマクロTSH血症が認められた。20人中16人のマクロTSHはTSH-IgG複合体であり、HAMA(抗ヒトマウス抗体)による干渉が5人で認められた。血清の希釈直線はTSHスタンダードとほぼ平行であり、希釈試験からマクロTSHの存在は推測出来なかった。酸処理および繰り返す凍結融解操作でTSHはIgGから解離し、また血清のマクロTSH分画(IgG分画)とTSHのインキュベートにより新たにマクロTSHが生成された。FRTL-5ラット甲状腺細胞を用いたTSHバイオアッセイで、マクロTSHの生物活性は低いことが明らかとなった。 【考察】TSHが10μU/ml以上の潜在性甲状腺機能低下症ではPEGによるスクリーニングを実施し、TSHのPEG沈降率が90%以上の症例ではゲル濾過によってマクロTSHを確認することが推奨される。マクロTSHの生物活性は低いことから、血清の遊離TSH値が正常であれば薬物治療は不要と考えられた。 上記内容を米国内分泌学会ENDO 2015 (San Diego)で発表し、Clinical Endocrinologyに投稿して受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例数を増やし、更にマクロTSHの生物活性も含めた病態解析も行うことができた。マクロTSH血症に伴う高TSH血症では、薬物治療が不要であることの確かなエビデンスを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
マクロTSH血症の病態をさらに詳細に検討する。マクロTSHの分子量が異なる患者が存在することから、マクロTSHは単一の病態ではなく複数の病態が関与している可能性がある。アイソトープを用いた結合実験で自己抗体の親和性と最大結合能を調べる。また、アフィニティーカラムを用いて抗体のサブタイプを調べ、自己抗体産生の原因について検討する。
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