研究課題/領域番号 |
25460236
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
片岡 泰文 福岡大学, 薬学部, 教授 (70136513)
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研究分担者 |
道具 伸也 福岡大学, 薬学部, 准教授 (60399186)
高田 芙友子 福岡大学, 薬学部, 助教 (70412575)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脳ペリサイト / ニコチン性アセチルコリン受容体 / 血液脳関門 / バレニクリン / 中枢性有害作用 |
研究概要 |
経口禁煙補助薬バレニクリンは自殺、自殺念慮、意識障害など重篤な中枢性有害作用を発現する。情動障害である抑うつ・自殺念慮は、神経細胞と共に脳神経血管機構を構築する血液脳関門の機能低下に連動して起こるとの報告がある。本研究では、脳神経血管機構を支える脳ペリサイトを「バレニクリン副作用感受性細胞」として捉え、喫煙リスク疾患を背景とした脳ペリサイトのバレニクリン感受性亢進が、バレニクリンによる脳神経血管機構の破綻とそれに続く中枢性有害作用発現へと導く可能性を追求する。 脳ペリサイトにおけるバレニクリン標的受容体であるニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)の役割を血液脳関門障害因子である基底膜分解酵素MMP-9産生を指標に検討した。脳ペリサイトはα7, α4, β2の各nAChRサブユニットを発現し、血液脳関門構成細胞の中ではα4およびβ2サブユニット発現量が最も高かった。α7およびα4β2 nAChR選択的アゴニストを用いてこれら細胞を刺激すると、脳ペリサイトのみがα7 nAChR刺激に応答してMMP-9を産生した。一方で、α4β2 nAChR刺激ではMMP-9産生は認められなかった。また、炎症性サイトカインであるTNF-α誘発性MMP-9産生において、α7 nAChRはp38 MAPKの活性化を介して促進的に働くが、α4β2 nAChRはAkt活性化を阻害し抑制的に働くことが明らかになった。このα4β2 nAChR刺激によるMMP-9産生抑制作用にはTNF受容体の発現抑制も関与していた。また、バレニクリンは脳ペリサイトのTNF-α誘発性MMP-9産生を抑制したことから、脳ペリサイトに対するバレニクリンの作用はα4β2作用優位であると考えられた。 以上、本年度は血液脳関門構成細胞の中で、脳ペリサイトが最もバレニクリンに対して感受性が高いことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血液脳関門構成細胞の中で、脳ペリサイトが最もバレニクリンに対して感受性が高いことを、ニコチン性アセチルコリン受容体発現能およびMMP-9産生能から明らかにした。本年度の成果は脳ペリサイトに対するバレニクリンの作用の一端ではあるが、脳ペリサイトを「バレニクリン副作用感受性細胞」として捉える上で基盤となる重要な実験証拠であると考えられる。本研究課題の根幹となる仮説を補強できた点を考慮すれば、進捗状況として概ね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、バレニクリンの脳ペリサイトへの作用を炎症性サイトカイン産生能や収縮・弛緩能を指標に検討する。また、バレニクリンによる血液脳関門機能低下の可能性とこの過程での脳ペリサイトの関与を明らかにするため、in vitro血液脳関門モデルおよび喫煙リスク疾患モデル動物(肥満性糖尿病、動脈硬化、慢性閉塞性肺疾患)においてバレニクリンの血液脳関門への作用を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末に学会出張をしたが、予定していたより安く済んだため。 H26年度に出張をする予定なので、旅費として使用する。
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