研究課題
経口禁煙補助薬バレニクリンは自殺、自殺念慮、意識障害など重篤な中枢性有害作用を発現する。情動障害である抑うつ・自殺念慮の誘発は、神経細胞と共に脳神経血管機構を構築する血液脳関門(BBB)の機能低下に連動するとの報告がある。本研究では、脳神経血管機構を支える脳血管内皮細胞を「バレニクリン副作用感受性細胞」として捉え、喫煙をリスクとする疾患に伴う脳血管内皮細胞のバレニクリン感受性の変容がバレニクリンによる脳神経血管機構の破綻とそれに続く中枢性有害作用発現へと導く可能性について検証する。本年度は、脳血管内皮細胞におけるバレニクリン標的受容体であるニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)を介した刺激によるBBB機能に及ぼす影響を検討した。BBB機能の評価には、①in vitro BBBモデルを用いた経内皮電気抵抗値 (TEER) 及びNa-F (sodium fluorescein)、EBA (evans blue-albumin) の透過係数、②脳血管内皮細胞に発現するタイトジャンクション構成蛋白質 (ZO-1、occludin、claudin-5) の発現量を指標とした。α7 nAChR選択的アゴニストの刺激ではTEER値の上昇及びNa-F、EBAの透過係数が低下した。また、α7 nAChR選択的アゴニストの刺激は脳血管内皮細胞中のclaudin-5発現量を増加させた。一方、α4β2 nAChR選択的アゴニストの刺激ではTEER値及びNa-F、EBA透過係数、タイトジャンクションタンパク質の発現量に変化は認められなかった。以上、バレニクリン標的受容体では、α7 nAchRは脳血管内皮細胞のバリア機能に促進的に働くがα4β2 nAChRはこの機能に作用しないことが判った。従って、バレニクリンは、α7サブタイプを介してBBB機能を修飾する可能性が考えられる。
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