研究課題
胚盤胞が子宮に着床する胎生5.5日から神経管閉鎖前の10.5日まで、ラット母獣の食餌を対照群の40%に制限することにより、生後8週の仔ラットが抗不安様行動を呈することを前年度までに明らかにした。また、メタボローム解析により、これらの仔ラットにおいて生後9週に血清エタノールアミン(Etn)が増加していることを見出した。うつ病ではEtnから生成されるエタノールアミンリン酸(P-Etn)の血中濃度低下が指摘されており、Etn代謝が胎生期低栄養ラットの行動異常を誘発している可能性が考えられた。一方、P-Etnからリン脂質の1つであるホスファチジルエタノールアミン(PE)が生合成されることから、本年度は情動に関連した前頭前皮質において、リン脂質代謝酵素の発現解析、および質量顕微鏡によるリン脂質成分解析を行った。レーザーマイクロダイセクションにより生後9週の胎生期低栄養ラットの前頭前皮質を採取し、real-time PCRにより遺伝子発現解析を行ったところ、PE、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジン酸(PA)およびフォスファチジルセリン(PS)生合成経路の律速酵素であるPcyt2、Pcyt1、GPAT1、およびPSS1の発現が増加していた。このうち、PSS1はPCをPSに変換する酵素であり、胎生期低栄養群の前頭前皮質内ではPEおよびPS生合成の活性化が示唆された。そこで質量顕微鏡解析により前頭前皮質のリン脂質構成を解析したところ、数種類のPE、リゾPEおよびPSが低栄養群において有意に増加していた。以上の結果により、胎生初期の低栄養は神経幹細胞の性質の変化を誘発し、生後の前頭前皮質のニューロンあるいはグリアのリン脂質構成を変化させ、行動異常を引き起こしている可能性が示唆された。
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