研究課題
本研究では、左心室に寄与する新奇の心臓未分化領域を同定し、この細胞群の性状を明らかにすることによって心臓構築の原理の理解を深めるとともに、この細胞群を細胞供給源とした心筋組織を人工的に構築し、心筋梗塞モデルの梗塞巣に移植することでこの細胞群の有用性を検討し、心筋組織再生という医療技術の発展につなげることを目的として研究を進めた。本年度は、作出されたErt2Creマウスを用いて系譜解析を行い、胎生7.5~9.5日目までに標識された細胞が心臓のどの領域に寄与するのか、時系列を追った細胞のlinage mapマップを作成した。その結果、胎生7.5日目にSfrp5 遺伝子を発現した細胞が右心室を除く心臓の全ての領域に到達したが、その後時期を追うごとに、流出路や左心室に到達する細胞が減少するのに対し、心房に寄与もしくは静脈洞にとどまる細胞が多数を占めるようになることが明らかとなった。これらの観察から、時期を追うに従って発現細胞周辺の心臓領域へと細胞の寄与が限定的になること、発現を維持した細胞は静脈洞へと分化することが示唆された。以上のように、左心室に寄与する新規の心臓未分化細胞領域を標識することが可能になったと考えられる。また、YFP発現細胞を、未分化状態を維持しながら増殖させるための培養条件について検討した。Wntシグナルの抑制ではその効果が得られないことが明らかとなったため、他のシグナルの検討を進めている。培養条件の確立は、今後の検討課題となった。
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Nature Communications
巻: 13 ページ: 11272, 11283
10.1038/ncomms11272
PLoS One
巻: 11 ページ: 150263, 150273
10.1371/journal.pone.0150263
巻: 11 ページ: 147088, 147107
10.1371/journal.pone.0147088
巻: 10 ページ: 138517, 138531
10.1371/journal.pone.0138517.