研究課題/領域番号 |
25460245
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
竹林 公子(鈴木) 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (00397910)
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研究分担者 |
鈴木 厚 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20314726)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 神経誘導 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
ヒト胎児の先天異常の原因には大きく分けて環境要因と遺伝要因がある。同じ環境要因にさらされても、重症化する場合と、逆に全く症状が出ない場合などがあり、これは個々の遺伝要因が大きく関与することを示す。中枢神経系が、環境要因・遺伝要因の変化に関わらず、発生過程で確実に形成されるためには神経形成の保証機構が必要だと考えられ、保証機構の破綻が先天異常の発症につながる可能性が高い。本研究では、FoxB1転写因子が関与する神経誘導の保証機構に着目し、FoxB1と他の制御因子の協調作用を解析することで、保証機構に重要な遺伝子ネットワークを明らかにすることを目的としている。 研究代表者はFoxB1転写因子が、BMPシグナルを抑制して神経を誘導すること、Wntシグナルを活性化し後方神経形成を促進することを報告している(Takebayashi-Suzuki et al. Developmental Biology 2011)。昨年度は、FoxB1転写因子と同様にBMPシグナルを抑制して神経を誘導するBiz転写因子が、複数の神経マーカーの発現においてFoxB1転写因子と協調作用を示すことを見出した。今年度はさらに詳細な解析を進め、これら二つの転写因子が後期神経マーカーNCAMの発現に対して相加効果を示すが、前後軸に沿った神経マーカーRx1A, Krox20, HoxB9や、より分化した神経細胞マーカーN-tubulinの発現に対しては両転写因子が相乗効果を示すことを明らかにした。興味深いことに、Biz転写因子はFoxB1転写因子と同様にBMPシグナルを抑制するが、BMPシグナル伝達因子Smad1/5/8との結合は認められないため、両転写因子の作用点は異なる可能性が高いことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者はFoxB1転写因子が関与する神経誘導の保証機構に注目し、FoxB1と他の制御因子の協調作用を解析することによって、神経保証機構に重要な遺伝子ネットワークを明らかにすることを目的としている。 FoxB1転写因子と同様に、BMPシグナルを抑制して神経を誘導するBiz転写因子を単離して、これらが互いに協調して働く実験結果を得た。今年度はさらに詳細な解析を進め、これら二つの転写因子が後期神経マーカーNCAMの発現に対して相加効果を示すが、前後軸に沿った神経マーカーRx1A, Krox20, HoxB9や、より分化した神経細胞マーカーN-tubulinの発現に対しては両転写因子が相乗効果を示すことを明らかにした。また、Biz転写因子はFoxB1転写因子と同様にBMPシグナルを抑制するが、BMPシグナル伝達因子Smad1/5/8との結合は認められないため、両転写因子の作用点は異なる可能性が高いことが示唆された。 「研究実績の概要」の項目には記載していないが、本研究費申請時の研究実施計画に記したとおり、Oct-25の下流因子としてFoxB1転写因子に加えて、さらに二つの因子(新規Oct-25下流因子)の単離に成功している。Oct-25によって発現が誘導される新規Oct-25下流因子は神経形成を促進すること、もう一方のOct-25によって発現が抑制される新規Oct-25下流因子は、神経組織を有する二次尾部構造を誘導する活性があることを見出している。これらの新規因子も神経誘導の保証機構に働くと考えられるため、本研究はおおむね順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、FoxB1転写因子とBiz転写因子の協調作用の分子メカニズムについて、さらに詳細に解析を行う。まずはBiz転写因子の単独過剰発現によるBMPシグナル伝達因子Smad1/5/8各因子の発現レベル変化、タンパク質間の結合変化などについて培養細胞を用いて生化学的に解析する予定である。さらに、Oct-25の下流因子としてFoxB1以外に単離した2つの新規Oct-25下流因子について、これらの因子の詳細な機能を調べるために、恒常活性型の過剰発現や機能阻害実験をおこなう。
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