研究課題
ヒト胎児の先天異常の原因には大きく分けて環境要因と遺伝要因がある。同じ環境要因にさらされても重症化する場合と、逆に全く症状が出ない場合などがあり、これは個々の遺伝要因が大きく関与することを示す。中枢神経系が環境要因・遺伝要因の変化に関わらず、発生過程で確実に形成されるためには神経形成の保証機構が必要だと考えられ、保証機構の破綻が先天異常の発症につながる。本研究ではFoxB1転写因子が関与する神経誘導の保証機構に着目し、FoxB1と他の制御因子の協調作用を解析することで保証機構に重要な遺伝子ネットワークを明らかにすることを目的とした。代表者はFoxB1転写因子がBMPとWntシグナル伝達経路の統合・連動に働き、カエル初期胚の背腹・前後軸を制御することを報告している(Takebayashi-Suzuki et al. Developmental Biology 2011)。さらに、FoxB1転写因子と同様に背腹軸と前後軸の両方に関与するBiz転写因子の単離に成功し、各々を阻害するモルフォリノオリゴ(FoxB1 MOおよびBiz MO)で機能阻害を行った。その結果、それぞれのMOをインジェクションした場合に比べ両者を組み合わせると神経マーカーNCAM、N-tubulin、および後方神経マーカーHoxB9の発現が著しく低下し、FoxB1とBiz転写因子が神経誘導の保証機構に重要な遺伝子ネットワークを形成していることが強く示唆された。さらに、BMPとWntシグナル伝達経路に対するBiz転写因子の作用機序についても明らかにしている(論文投稿準備中)。また、代表者らはOct-25転写因子の新規下流因子としてFoxB1以外に複数の因子を単離した。当初の研究計画通り、その1つであるJunB転写因子の機能解析を行ない、後方組織である尾の形成に深く関与することを明らかにし論文として報告した。
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ZOOLOGICAL SCIENCE
巻: 33 ページ: 印刷中
Developmental Biology
10.1016/j.ydbio.2016.04.014
http://home.hiroshima-u.ac.jp/amphibia/Suzuki/suzukitop.html
http://seeds.office.hiroshima-u.ac.jp/profile/ja.95dd2808fd1fa7ba520e17560c007669.html