研究課題/領域番号 |
25460247
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
坂部 正英 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (00525983)
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研究分担者 |
中川 修 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40283593)
林 寿来 愛知医科大学, 医学部, 講師 (30533715)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 心臓発生 / 遺伝子発現調節 / 器官形成 / 心内膜床 |
研究概要 |
心臓中隔や弁は、初期胚心臓の房室管と流出路に認められる1対の隆起「心内膜床」により形成される。したがって、この心内膜床の形成不全は心室中隔欠損や弁形成異常など様々な先天性心疾患の原因となる。これまでの研究により、心内膜床は心筋から分泌されるTGFb2およびBMP2のシグナルを受けた内皮細胞が間葉細胞へと形質転換(Endothelial-mesenchymal transformation; EMT)することによって形成されることがわかってきている。しかしながら、最近の研究ではこれらの成長因子以外にも心内膜床形成に関与する新たなリガンドやレセプターの関与が示唆されている。そこで本研究では、BMP9およびBMP10の特異的受容体であるALK1欠損マウスが心血管系の形成異常により胚性致死となることに注目し、心内膜床形成におけるこれらのシグナル伝達の関与を検討した。 上述のように、ALK1欠損マウスは血管形態形成異常を示して胎生致死となることが報告されているが、我々は組織学的解析からALK1欠損マウスが心内膜症の形成異常を示すことを見出した。また、心内膜床形成培養モデルを用いてBMP9がTGFb2と協調して心内膜内皮細胞のEMTを誘導できることが明らかとなった。そこで我々は、BMP9-ALK1シグナルの下流ターゲット因子をMicroarrayを用いて解析したころ、Notchシグナルのターゲット因子として同定されたHrt遺伝子(Hrt1/Hrt2)が含まれていた。興味深いことにHrt1/Hrt2ダブルノックアウトマウスも心内膜床形成不全を示すことから、BMP9/BMP10-ALK1シグナルとNotch-Hrtシグナルはクロストークしており、このシグナル伝達クロストークが心内膜床形成を制御する新たなメカニズムであることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究計画において、最大の目的は心内膜床形成におけるBMP9-ALK1シグナルとHrt転写因子の意義を検討することにある。我々は研究計画を遂行し、以下の結果を得ている。①培養内皮細胞にBMP9を添加するとHrt遺伝子の発現が上昇する。②ALK1欠損マウスの内皮細胞ではHrt遺伝子の発現低下が認められる。③ALK1欠損マウスは心内膜床形成不全を示す。④BMP9はTGFb2と協調して内皮-間葉形質転換を誘導する。⑤Hrt1/Hrt2欠損マウスもALK1欠損マウスと同様に心内膜床形成不全を示す。これらの結果から、BMP9-ALK1シグナルとHrt遺伝子は心内膜床形成に非常に重要な役割を担っていることが示唆され、またBMP9-ALK1シグナルとNotch-Hrtシグナルのクロストークが示唆され非常に興味深い結果が得られている。したがって、研究計画はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、心内膜床形成におけるBMP9-ALK1シグナルとNotch-Hrtシグナルのクロストークの存在が示唆されたが、確固たる証拠はまだつかめていない。そこで、今後は、BMP9-ALK1シグナルにおけるHrt遺伝子の発現制御機構に焦点を絞って研究を推進する予定である。培養内皮細胞にBMP9を添加するとHrt遺伝子の発現が上昇することを利用し、Hrt遺伝子の発現調節領域の活性にBMP9-ALK1シグナルの下流転写因子であるSmadがどのように関与しているのかを検討する。また、ALK1欠損マウスの心内膜床形成不全に対するHrt遺伝子発現の重要性を検討するために、Hrt遺伝子を強制発現するCAG-CATシステムTgマウスの作成を試みる。このHrt遺伝子の強制発現によりALK1欠損マウスの心内膜床形成不全が緩和(レスキュー)しうるかを検討し、心内膜床形成におけるBMP9-ALK1シグナルの重要性とその意義を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度に購入を予定していた備品(正立顕微鏡)の購入および次世代シークエンス解析を実験の進展状況により来年度に見送ったために次年度使用額が生じた。 該当助成金は計画を繰り越して次年度に使用する予定である。次年度前期に正立顕微鏡(Nikon製 ECRIPSE Ciシリーズ、60万円)、次年度後期に次世代シークエンス解析(30万円)を行う予定である。この次年度への繰り越しは、次年度の研究計画の遂行に影響はない。
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