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2014 年度 実施状況報告書

一次感覚神経の発生・進化における形態と機能の連関の役割

研究課題

研究課題/領域番号 25460251
研究機関自治医科大学

研究代表者

矢嶋 浩  自治医科大学, 医学部, 講師 (10433583)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード発生 / 進化 / 一次感覚神経 / 脊髄神経節 / 神経堤細胞 / Six遺伝子 / Neuropilin / エンハンサー
研究実績の概要

「髄内か髄外かを司る分子機構の解明」
マウス体幹部において、Six1とSix4の両遺伝子を欠損(Six1-/-Six4-/-)させると髄内一次感覚神経様細胞が生じる。前年度の解析から、この過程は細胞自律的であることが示唆された。一次感覚神経の髄内か髄外かを司る機構におけるSix1発現タイミングの役割をより詳細に明らかにするため、Six1+/-Six4-/-胚を用いて解析を行った。この胚では、Six1+/-Six4+/-胚よりも多くの髄内一次感覚神経様細胞が観察され、さらに一部はSix1陽性であった。脊髄内外を隔てる基底膜を横切っているSix1陽性細胞は観察されないことから、Six1の発現は髄内で開始したと考えられる。これらの結果から、早期から発現するSix1は、体幹部神経堤細胞の一部に備わっていると考えられる髄内への自律的な移動能を阻害していることが示唆された。また、Six1発現の欠損ではなく、遅延によっても髄内一次感覚神経様細胞が生じることが明らかになった。
「節構造を司る分子機構の解明」
マウスSix1+/-Six4-/-胚では、Six1+/-Six4+/-胚よりも多くの髄内一次感覚神経様細胞が観察されたにもかかわらず、顕著な節構造の変化は観察出来なかった。この結果から、節構造の形成には1コピーのSix1で十分である可能性が示唆された。
「形態と機能の連関と進化における役割」
有尾両生類の脊髄形成過程は、無尾両生類アフリカツメガエルよりも羊膜類的であるとされている。2種類の有尾両生類胚において、組織学的解析によって髄内および髄外一次感覚神経細胞を同定した。有尾両生類の髄内一次感覚神経細胞はアフリカツメガエルよりも脊髄の側面に位置し、その発生のタイミングも遅延していた。また、爬虫類スッポン胚においては、他の羊膜類同様、髄内一次感覚神経細胞は観察されなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「髄内か髄外かを司る分子機構の解明」と「節構造を司る分子機構の解明」におけるSix1+/-Six4-/-マウス胚の利用は、研究実施計画には明記されていないものであるが、これによって両機構におけるSix1発現タイミングの役割がより詳細に明らかになることが期待され、研究の進展に大きな貢献となる。アフリカツメガエル髄内一次感覚神経細胞は、細胞死で消失する直前にSix1の発現が開始する。Six1+/-Six4-/-マウス胚において、髄内一次感覚神経様細胞がSix1陽性となることは、両生類の髄内一次感覚神経細胞に近い性質を獲得している可能性を示唆していると考える。この細胞の性質と機能を詳細に解析することで、「形態と機能の連関と進化における役割」の進展にも貢献出来ると考える。
「形態と機能の連関と進化における役割」においては、有尾両生類と爬虫類の解析に着手し、既に組織学的解析によって体幹部一次感覚神経細胞を同定しており、十分な進展と考える。

今後の研究の推進方策

前年度、レーザーマイクロダイセクションとマイクロアレイを用いて遺伝子発現解析を行う前にNeuropilin(Nrp)を分子機構の候補として同定し、それによって「髄内か髄外かを司る分子機構の解明」と「節構造を司る分子機構の解明」が不可分な計画である可能性が示唆されていた。最近、他の研究グループから、アフリカツメガエルにおいてNrp1がSix1遺伝子の制御下にあることが報告された(Yan et al., 2015)。このことは、遺伝子間相互作用が種を超えて保存されていることを示唆しており、本研究計画を後押しするものである。今年度解析を行ったSix1+/-Six4-/-マウス胚も積極的に活用し、Nrpを軸とした研究計画を継続する。
「形態と機能の連関と進化における役割」において、前年度から体幹部一次感覚神経におけるSix1発現を制御しているエンハンサーの解析も行っている。既に、メダカ、ツメガエル、スッポン、ニシキヘビ、ニワトリ、マウスのエンハンサー活性をニワトリ胚脊髄神経節で確認している。さらに、同一細胞で2種類のエンハンサー活性を解析する手法を確立しており、これによって種特異的なエンハンサー活性、つまり種特異的なSix1発現と、体幹部一次感覚神経の形態・機能との連関を明らかに出来ると考える。

次年度使用額が生じた理由

レーザーマイクロダイセクションとマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析を行う前に候補遺伝子が同定され、その解析を継続しているため。

次年度使用額の使用計画

レーザーマイクロダイセクションとマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析を行うことなく研究目的が達成できる可能性があるが、候補遺伝子のより詳細な解析を行うために使用する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (3件)

  • [雑誌論文] Six1 is a key regulator of the developmental and evolutionary architecture of sensory neurons in craniates2014

    • 著者名/発表者名
      Hiroshi Yajima, Makoto Suzuki, Haruki Ochi, Keiko Ikeda, Shigeru Sato, Ken-ichi Yamamura, Hajime Ogino, Naoto Ueno and Kiyoshi Kawakami
    • 雑誌名

      BMC Biology

      巻: 12 ページ: 40

    • DOI

      10.1186/1741-7007-12-40

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] マウス髄内一次感覚神経様細胞の成り立ちから考える脊椎動物一次感覚神経の進化2014

    • 著者名/発表者名
      矢嶋浩、佐藤滋、川上潔
    • 学会等名
      日本動物学会第85回大会
    • 発表場所
      東北大学川内北キャンパス
    • 年月日
      2014-09-13
  • [備考] 自治医科大学・分子病態治療研究センター細胞生物研究部

    • URL

      http://www.jichi.ac.jp/biol/home.html

  • [備考] researchmap

    • URL

      http://researchmap.jp/hyajima/

  • [備考] 自治医科大学・研究業績データベース

    • URL

      http://kyouingyousekidb.jichi.ac.jp/profile/ja.81bf6dbfecfc0b6d.html

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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