研究課題/領域番号 |
25460252
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 滋 自治医科大学, 医学部, 准教授 (70306108)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 感覚器形成 / プラコード / 神経堤 / エンハンサー / 転写制御 / 難聴 / ニワトリ胚 / トランスジェニックマウス |
研究実績の概要 |
Six1遺伝子の機能欠損は内耳や嗅上皮をはじめとする感覚器の劇的な形成異常を引き起こす。Six1は単一のプラコード前駆領域(PPR)から全てのプラコード、そして感覚細胞・感覚ニューロンまで発現し、その感覚器特異的な発現パターンは5種類のエンハンサーによって制御されている。 マウスのPPR特異的エンハンサー(mSix1-14)の活性はPPRの前側部分に限局されているが、ゼノパス由来のXSix1-14は、ニワトリ胚だけでなくトランスジェニックマウス胚においても、より後方の領域を含む広い領域で転写を活性化することがわかった。次に、プラコードエンハンサーの1つであるSix1-21を利用したmSix1-21-NLSCreマウスの解析により、Six1-21エンハンサーはE8.5マウス胚において肥厚した明確な耳プラコードが分化する前の外胚葉領域で転写を活性化できることもわかった。興味深いことに、この時期にはSix1-14が神経板に隣接する最前部の外胚葉でエンハンサー活性を示す。もう1つのプラコードエンハンサーであるSix1-8を利用したmSix1-8-NLSCreマウスの解析により、以下の結果が得られた。Six1-8は感覚神経節における神経細胞特異的なSix1の発現を規定している。嗅上皮では、Six1-8は、初期に分化し前脳に向かって移動する一群の神経細胞におけるSix1の発現を活性化する主要なエンハンサーであり、陥入がはじまる前のプラコードの段階で当該神経細胞の同定を可能にした。一方、Six1-21は初期に分化する神経細胞以外の嗅上皮の細胞でやや遅れて転写を活性化した。以上は、感覚器形成において主要な役割を果たすSix1の制御に関する新たな知見であり、感覚器形成の理解に非常に重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PPRの細胞系譜解析や細胞傷害実験に用いるために、Six1-14の制御下でCreリコンビナーゼを発現するマウスを樹立することが本研究の主要な目的の一つである。今回、アフリカツメガエル由来のSix1-14(XSix1-14)がニワトリ胚だけでなくトランスジェニックマウス胚においてもマウス配列(mSix1-14)に比べて広範な外胚葉領域(PPR)でエンハンサー活性を示すことを確認することができた。また、XSix1-14を複数個つなげた場合には異所的な発現が見られることも検証し、Cre発現マウス作製に最適なエンハンサーを同定できたと考えている。mSix1-14を用いてマウスを作製し解析を行うことも可能だったが、慎重にエンハンサーの選定を行ったことで、最終的に、より有用なマウスの樹立、質の高い研究成果につながるものと確信している。
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今後の研究の推進方策 |
XSix1-14を利用することで広範なPPR細胞でCreリコンビナーゼを発現するマウスを樹立し、研究計画に沿って研究を進めたい。他の実験も計画に沿って進める。今年度と同様に、mSix1-8-NLSCreとmSix1-21-NLSCreマウスを活用した実験も継続し、外胚葉→PPR→プラコード→感覚神経と進行する感覚器形成の過程におけるSix1を中核とする遺伝子カスケードの理解を深めて行きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
理研CLSTでのマウス作製を次年度に行うため。
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次年度使用額の使用計画 |
理研CLSTでのマウス作製。
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