研究課題
鼻中隔など顔面正中部を構成する正中部骨格は,ラトケ嚢の左右に出来る一対の梁軟骨が吻側で融合した中隔軟骨を基本構造とする。ニワトリ胚の中隔軟骨原基では,その正中部分でPNAレクチン結合性糖鎖分子(PNA-BM)が発現するが(陽性領域),側方下部では発現しない(陰性領域)ことから,中隔軟骨は性質の異なる2種類の軟骨細胞から構成されると予想される。本研究の目標は,PNA-BM発現の不均一性に注目して中隔軟骨の発生起源を解明することであり,本年度はPNA-BM陽性領域と陰性領域を区別して,それぞれを構成する軟骨細胞の性質と遺伝子発現を比較した。まず,陽性領域と陰性領域を構成する軟骨細胞の形態や細胞極性,増殖を調べた。その結果,細胞増殖は互いに独立に変化していたことから,2領域の形態形成は独立に進行していると考えられた。また,正中部のPNA-BM陽性軟骨細胞ではアクチンが強く凝集していたが,側方の陰性細胞では凝集は不明瞭だった。そこでアクチンの重合状態が軟骨形態やPNA-BM発現に影響することを考え,アクチン機能を阻害して変化を調べた。まずROCK阻害剤の投与によりアクチンの機能阻害を試みたが,PNA-BMの発現や軟骨凝集塊形成に影響しなかった。またサイトカラシンDの局所投与も行ったがPNA-BMの発現は維持されたことから,PNA-BM発現とアクチン重合状態は機能的には直接関連していないと考えられる。今後,糖鎖の切断酵素の局所投与などを行ってアクチン分布の変化や形態への変化を検討する。続いて,陽性細胞と陰性細胞の差異を遺伝子レベルで解析するために,それぞれからmRNAを抽出し,次世代シークエンサーによる発現解析と比較を行った。PNA-BM陽性細胞で発現上昇する遺伝子(群)や逆に発現低下する遺伝子のリストは得られており,今後リストの上位にある遺伝子の発現解析を行う計画である。
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Metabolism
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Journal of Cell Science
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