研究課題/領域番号 |
25460263
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
市瀬 広武 東京大学, 医科学研究所, 助教 (10313090)
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研究分担者 |
市瀬 多恵子 東京大学, 医科学研究所, 助教 (00396863)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Ras / MAPキナーゼ / リンパ管内皮細胞 / 内皮間葉移行 |
研究概要 |
Rasシグナルの破綻は、癌や形態形成異常などの疾患を引き起こす。しかし、Ras下流の複数のシグナル経路の役割に関する理解は進んでいない。本研究では、野生型Rasのマウス生体での過剰発現が、Rasシグナルの増強と、それに伴う形態形成異常を引き起こすことを利用して、Ras下流シグナルの役割を明らかにすることを目的としている。具体的な研究実施計画は次の通りである。1) 野生型H-RasあるいはH-Rasイフェクタードメイン変異体をCre組換えに依存してコンディショナルに過剰発現するマウスを用いて、血管・リンパ管・皮膚の形成異常の有無や性状を比較する。2) in vitroの実験によって、分子レベルでのRas下流イフェクター経路の役割を明らかにする。 平成25年度では、血管・リンパ管形成異常を指標にした、Rasの下流シグナル経路の内皮細胞における役割の検討を進めた。血管内皮細胞が、内皮細胞としての性質を失い、線維芽細胞あるいは平滑筋細胞に似た性質を獲得する、内皮間葉移行(Endothelial-to-Mesenchymal Transition: EndMT)という現象が知られる。この現象が、正常発生や疾患に深く関わることが近年明らかになってきているが、われわれは、生体および培養系の両方において、リンパ管内皮細胞においても類似した現象が認められることを見出した。さらに、リンパ管内皮細胞において、FGFR1受容体を介したFGF2の刺激、およびRas-Erk MAPキナーゼシグナル経路の活性化が、TGFβシグナル経路を抑制することで内皮間葉移行を抑制し、リンパ管内皮細胞としての性質を維持する役割を果たすことを明らかにした。この成果は、査読有論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度では、Ras下流シグナル経路の血管・リンパ管内皮細胞における役割を明らかにすることを目的とした。当該年度において血管内皮細胞の検討はできなかったが、リンパ管内皮細胞の検討に集中した結果、論文として成果を公表するに至ったことから、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
Ras下流シグナル経路の役割について、皮膚・毛胞形成異常を指標とした、表皮細胞における役割の検討を開始するとともに、血管・リンパ管形成異常を指標とした、内皮細胞における役割の検討も、引き続き推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、平成25年度において、Ras下流シグナル経路の、血管内皮細胞およびリンパ管内皮細胞の両方における役割を明らかにするための研究計画を立てていたが、リンパ管内皮細胞に焦点を絞って研究を進めた結果、血管内皮細胞の検討を開始するに至らなかった。 血管内皮細胞に焦点を置いた解析のための遺伝子改変マウスの維持、およびマウス血管内皮細胞の培養を行うため、マウス飼育・維持費と細胞培養に要する費用に充当する。また、血管内皮細胞特異的マーカーを検出する抗体、遺伝子発現解析試薬、染色試薬の購入に充当する。
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