研究課題/領域番号 |
25460265
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
易 勤 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 教授 (70334753)
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研究分担者 |
山本 靖彦 金沢大学, 医学系, 准教授 (20313637)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脂肪幹細胞 / 腸間膜脂肪 / 皮下脂肪 / 内臓脂肪蓄積 / スンクス / 分化誘導 |
研究概要 |
内臓脂肪の蓄積は、糖尿病、高脂血症、高血圧などの生活習慣病や動脈硬化性疾患の発症に深く関与している。これまで、肥満とその病態の解明には、高脂肪食負荷モデルやレプチン関連遺伝子変異動物が用いられてきた。本研究では、ジャコウネズミ属のスンクス(Suncus murinus)の脂肪組織について、詳細に検討を行った。 肉眼的・顕微鏡的に、スンクスには精巣上体(Epi)、後腹膜(Ret)、皮下(SQ)白色脂肪組織(WAT)が存在することを確認できたが、腸間膜(Mes)にはWATは全く存在しなかった。肩甲骨周囲の褐色脂肪(Br)組織は確認できた。 Mes WATの存在しない理由を明らかにするため、脂肪幹細胞の存在の有無をフローサイトメトリーを使って調べた。PI+CD31+Lin+細胞(死細胞、内皮細胞、血球系分化細胞)をまず除外し、組織重量当たりの脂肪幹細胞CD34+CD29+Ly6A/E(Sca1)+CD24+細胞数を調べた。スンクスのEpi、Ret、SQ、Brではその存在が確認できたが、Mesでは全く検出できなかった。マウスではMesにCD34+CD29+Ly6A/E(Sca1)+CD24+細胞が一番多く存在していた。スンクスのMesではCD34+細胞数は、Epi、Ret、SQ、Brの3倍以上であった。 脂肪組織より単核細胞を分離して脂肪細胞への分化誘導培地で2週間培養しても、スンクスMes由来の細胞はOil Red O染色陽性となる成熟脂肪細胞には全く分化しなかった。 以上の結果から、スンクスは内臓脂肪、特に腸間膜脂肪の無い動物モデルとして肥満研究に有用と考えられ、脂肪幹細胞の発生、遊走、維持、分化のメカニズムを考える上でも重要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に我々は次の「研究目的」を記載していた。 スンクスの脂肪幹細胞の分布・分化能を解析するため,次の四点を解明する。 1.スンクス脂肪幹細胞の同定を行う。続いてその存在・分布を調べる。特に腸間膜において脂肪幹細胞が存在しているか?2.食餌・薬剤により,全身の脂肪,特に腸間膜脂肪の分化・誘導が可能なのか?3.満腹中枢破壊による視床下部性肥満の誘導法で,スンクスの肥満・腸間膜脂肪の形成を導くことが可能なのか?4.皮下脂肪と腸間膜組織の間の相互移植により,腸間膜に脂肪の分化・誘導が可能なのか? 研究計画には平成25年度は次の三つが記載されている。1. スンクス脂肪幹細胞の同定,その存在と分布状況の調査。2. スンクス内臓脂肪幹細胞の成熟分化誘導の調査。3. 組織学的なアプローチによるスンクス脂肪幹細胞の存在の調査。 上記のとおりに実行し、予想した結果を得られた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を遂行する上で、一年目が終わりにあたり、予定の通り進行しており、現在研究計画の変更について、考えていない。 本研究課題の今後の推進方策について、今までのスンクスの腸間膜に脂肪幹細胞が確認されなかったことを踏まえ、主に「Gold Thioglucoseの腹腔内投与によるスンクスの肥満誘導実験」と「Pioglitazoneの投与によるスンクスの脂肪幹細胞の分化誘導実験」の実験を行い、中枢性肥満誘導と末梢性脂肪幹細胞の誘導の研究を展開し、スンクス腸間膜脂肪幹細胞の分布と分化を追跡したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
注文した実験用消耗品は値下がりが発生したため、残額が残りました。 次年度の補助金に加えて、同実験を継続していく予定です。
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