研究課題
我々の最近の研究により,スンクスの体重が生後二ヶ月以降ほとんど変わらず,内臓脂肪である腸間膜脂肪も蓄積しないことが明らかとなり,スンクスは抗内臓脂肪蓄積の実験動物モデルとして,肥満・脂肪細胞分化研究に有用であることを報告してきた。本研究は,スンクスの脂肪幹細胞に注目し,脂肪幹細胞の同定,その存在・分布の解析と成熟脂肪細胞への分化能についても検討した。その結果,脂肪幹細胞と考えられるCD34+CD29+Ly6A/E(Sca1)+CD24+の存在を確かめるとともに,定量的解析を行うと,精巣上体,後腹膜,皮下白色脂肪組織ではその脂肪幹細胞は存在していたが,腸間膜では皆無であることが判明した。スンクスの腸間膜から細胞を分離,培養して分化誘導培地で2週間培養を試みたが,脂肪染色であるOil Red O染色陽性となる成熟脂肪細胞には全く分化しなかった。更に,in vivoで脂肪幹細胞分化誘導因子であるPioglitazoneの投与や,満腹中枢破壊・視床下部性肥満の誘導法であるGold Thioglucoseの腹腔内投与を行ったが,腸間膜脂肪の誘導分化に至らなかった。皮下脂肪・腸間膜組織間の相互移植実験も行い,腸間膜組織を皮下脂肪環境下におくことで成熟脂肪細胞が発生するかどうかを確かめたが,腸間膜脂肪の誘導分化までに至らなかった。加えて,スンクスのエネルギー吸収・代謝を調べ,食餌誘導性肥満を起こす実験を行うため,スンクスに高脂肪食を与え,その体重,全身脂肪,血清脂質および糞の脂質成分の変化を検討した。通常の餌に比べ,高脂肪食を与えた場合は,スンクスの毎日の摂食量は少なかったが,毎日摂食したカロリー量は変わらなかったため,スンクス体重の変化はなく,腸間膜脂肪の形成もなかった。スンクスは高カロリー負荷に対して抵抗性があると考えられる。
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