研究課題/領域番号 |
25460266
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
石村 昭彦 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (80375261)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 遺伝子 / 発現制御 / 発生・分化 / 癌 |
研究概要 |
ウイルス感染発癌モデルマウスを利用したスクリーニングによって同定された癌関連遺伝子の1つ、Jmjd5による(1)遺伝子制御メカニズムおよび(2)癌発症や正常組織分化との関係を明らかにすることを目的に、2013年度は以下の研究を遂行した。(1)変異マウスを用いた解析によって示唆された「Jmjd5が主要な癌抑制遺伝子p53が司るシグナルの新しい調節因子の1つである可能性」を検討するために、正常胚とJmjd5欠損胚よりTotal RNAを抽出し、マイクロアレイ解析によって網羅的に遺伝子発現パターンを比較した。その結果、研究代表者らが既に報告したp21遺伝子を含む既知のp53下流標的遺伝子がJmjd5欠損胚で上昇している事が示された。またマウス胎児繊維芽細胞(MEFs)を用いた分子生物学的アプローチから、Jmjd5変異細胞では正常細胞と比べて内在性p53蛋白質の標的遺伝子座へのリクルートが上昇しており、その結果、少なくとも4種類のp53標的遺伝子の発現亢進が引き起こされる可能性が示唆された。(2)Jmjd5欠損マウスは胚性致死のため、成体マウスにおけるJmjd5と腫瘍発症の関係性を検証することを目的に、タモキシフェン誘導型Jmjd5変異マウスの作製に成功した。そして作製したマウスより樹立したMEFsの培養上清中に4-Hydroxytamoxifen(4-OHT)を添加したとき、MEFs細胞内でJmjd5遺伝子の欠損が非常に高効率(90%以上)に誘導できることを確認した。また個体レベルでJmjd5の役割を調べるために、神経組織と血管・ヘマンジオブラスト特異的Jmjd5欠損マウスの系統樹立に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題を遂行するために計画した遺伝子改変マウスの作製が、全て2013年度中に完了できた。またマイクロアレイ解析によってJmjd5の標的遺伝子候補のリスト化も行い、2014年度以降の計画を順調に遂行できる準備を整えることが出来た。従って、達成の自己評価を「おおむね順調に進展している」という評価に定めた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)Jmjd5の新規標的遺伝子の同定および遺伝子発現制御機構の解明;マイクロアレイ解析によって示唆された(p53シグナル関連遺伝子を含む)複数のJmjd5標的遺伝子候補について、Jmjd5欠損胚における発現パターンを定量PCRによって調べ、アレイ解析の結果と一致する候補を選抜する。さらにバイオインフォマティクス的手法を用いて、更なる未知のJmjd5標的遺伝子や関連シグナルの同定を試みる。また同定した候補遺伝子がJmjd5の直接的な標的遺伝子であるか検討するため、内在性Jmjd5蛋白質がターゲット遺伝子座へリクルートされているかどうかクロマチン免疫沈降法によって調べる。 (2)Jmjd5と腫瘍・正常組織形成の関係性;作製したタモキシフェン誘導型Jmjd5変異マウスにタモキシフェン投与を行い、その後、腫瘍発症が認められるか経過観察する。同時に、タモキシフェン誘導型Jmjd5変異マウス由来MEFsの培養上清中に4-Hydroxytamoxifen(4-OHT)を添加し、細胞内でJmjd5遺伝子の欠損をさせた状態で長期培養させたとき、細胞の不死化・形質転換が観察されるか調べる。次にWeb上で公開されているThe Cancer Genome Atlas (TCGA) Data Portal より癌患者の遺伝子発現プロファイルを抽出し、Jmjd5の発現パターンと「ヒト」の癌発症との相関性を検証する。一方、組織分化・維持過程におけるJmjd5の機能を調べるために、樹立した神経組織と血管・ヘマンジオブラスト特異的Jmjd5欠損マウスの表現型解析を行う。
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