研究課題/領域番号 |
25460271
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
谷水 直樹 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (00333386)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肝幹細胞 / 肝臓 / 肝細胞 / 胆管上皮細胞 / 組織幹細胞 |
研究実績の概要 |
前年度までの研究で、EpCAM(+)肝幹・前駆細胞特異的に発現している転写因子grainyhead-like 2がEpCAM(+)肝幹細胞からの肝細胞分化を抑制することを明らかにした。そこでさらに、Grhl2の下流で発現が変化するmicroRNAを探索したところ、miR122の発現を抑制する可能性が示唆された。miR122の発現は、肝芽細胞から肝細胞への分化に伴い発現が上昇するが、胆管上皮細胞への分化に伴い発現が低下していた。miR122をEpCAM(+)肝幹細胞由来のコロニーに導入したところ、肝細胞マーカーであるアルブミンの発現が増加した。Grhl2がmiR122の発現を直接制御している可能性を調べるために、miR122のプロモーターおよびエンハンサー領域をクローニングし、ルシフェラーゼアッセイを行った。その結果、Grhl2はmiR122の発現を転写レベルで制御していることが明らかになった。 慢性肝障害時に、肝細胞の脱分化によって生じるSox9(+)肝前駆細胞の性状を明らかにするために、マイクロアレイを用いて成熟肝細胞との比較を行った。その結果、細胞表面抗原であるCD24の発現が上昇していることが明らかになった。FACSを用いてSox9(+)肝前駆細胞での発現を調べたところ、So9(+)細胞はCD24(-)とCD24(+)細胞に分画できること、CD24(+)はCD24(-)と比較してさらに脱分化が進行していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
転写因子Grhl2による肝幹前駆細胞の分化能の制御について、新たにmiR122を介したメカニズムがあることを見出した。上皮細胞の分化成熟化を促す因子であるGrhl2が、細胞の分化可塑性を制御している分子メカニズムを、さらに詳細に明らかにすることができた。また、Sox9(+)前駆細胞には、Subfractionが存在していることが明らかになった。これにより、肝細胞の前駆細胞化の過程をより詳細に明らかすることが可能になった。発生期に存在するEpCAM(+)肝幹細胞および障害時に出現するSox9(+)肝前駆細胞の生体内での役割についての解析には至っていないが、In vitroでの解析を確実に進めることができていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
障害誘導性のSox9(+)細胞の移植実験やSox9(+)細胞の分化能を決定している分子メカニズムの解析を行い、障害誘導性の肝細胞の性状変化および肝前駆細胞の生理的機能を明らかにしたいと考えている。また、細胆管反応を伴う肝障害の他に、急性劇症肝炎モデルであるAcetaminophen投与モデルでのSox9(+)肝細胞出現の有無や、Diethylnitrosamine投与肝発現モデルにおいてSox9(+)細胞の出現がみられるかどうかについての検討を行っていく。このような実験を行うことでも、Sox9(+)肝細胞の障害からの組織再生や障害に対する組織保護作用などの観点からも、肝細胞の前駆細胞化の意義を明らかにする。 また、発生過程における肝幹細胞の分化能変化のメカニズム解析をさらに進め、増殖能の高い肝幹細胞からの肝細胞分化を促進する方法を見出したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に使用するTGマウスの輸送費として使用する予定であったが、輸送元の都合上、今年度の輸送が困難となったため、次年度に輸送することになった。
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次年度使用額の使用計画 |
TGマウスやマウス移植系を用いて、肝幹細胞や肝前駆細胞のin vivoでの分化能や機能の解析を行う。
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