研究課題/領域番号 |
25460273
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
中島 裕司 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80207795)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 胚心臓 / 心筋傷害 / 心筋修復 / 冠状血管 / 心外膜 / 内皮細胞 / 発生学 / 解剖学 |
研究実績の概要 |
H26年度は安定した心筋傷害モデルの作製を行い、冷凍傷害Cryo-injury法を選択した。この方法では、ニワトリ胚発生ステージ16-17胚(2.5日胚)心膜体腔を開放し心尖部にCryoprobe(先端径100-200μmのチタン製probeを液体窒素中で冷却して使用)を接触させ心筋傷害を作製した。傷害モデルの経時的変化をHE、Masson Trichrome染色で観察した。その結果、傷害心筋は2通りの経過で修復されることが分かった。典型的経過は、傷害部位の心内膜および原始心外膜がEpithelial-mesenchymal transformation(EMT)を起こし、双方の間葉細胞が傷害部を修復する。次に修復部位に心筋が充填される。この心筋の起源については①周辺からの遊走と増殖、②内皮細胞由来、③心外膜由来の心筋が考えられるが不明である。第二の修復過程は体壁の細胞(上皮と間葉)が心室壁に癒着し、傷害部位を充填し修復する。この場合も傷害部位は心筋で置き換わるが、充填された心筋の起源は不明である。27年度は心筋、間葉細胞、増殖マーカー、細胞外マトリックスの免疫染色を行い傷害心筋の起源を明らかにしたい。 また、心臓の栄養血管である冠状血管内皮細胞の起源についても検討し以下の結果を得た。①心外膜の起源であるProepicardial organ (PE)は表層の転写因子WT1陽性細胞と、その内側のWT1陰性細胞(一部は静脈洞の内皮細胞に連続している)から構成される。②WT1陽性細胞は冠状血管のうちでも主に心筋の深層にある血管の内皮細胞に分化する。③一方、WT1陰性細胞は主に心筋表層(心外膜下)の内皮細胞へ分化する。27年度はマーカー分子の免疫染色によって冠状動脈と静脈の内皮細胞の起源を明らかにする。またPEから血管内皮細胞の伸長を誘導する分子機構についても検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胚心臓の傷害モデルはこれまでに報告がなく、確立までに時間がかかった。確立後は本モデルを使用しマイクロアレーによる「傷害心筋修復再生に関係する分子」を明らかにできる段階に到達した。 また冠状血管内皮細胞の起源に関する検討では、冠状動脈と冠状静脈の内皮細胞の起源が異なるという可能性が示唆されてるので今後の展開が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
確立した心筋傷害モデルを用いて、その修復過程と分子メカニズムを明らかにする。心筋、増殖、間葉細胞のマーカー分子、細胞外マトリックスの免疫染色を用いて修復過程を検討し、修復心筋の起源、修復心筋の増殖、心筋幹細胞出現の有無について明らかにする。マイクロアレー法を用いて、修復心筋特異的に発現する遺伝子を検索し、心筋修復(再生)のメカニズムの一端を明らかにする。 冠状血管内皮細胞の起源については、Quail-Chick Chimera法、蛍光色素標識、GFP遺伝子導入法によってProepicardial Organ (PE)を標識し、動脈、静脈マーカー分子の免疫染色によってそれぞれの内皮細胞の起源を同定する。また器官培養法を使用して冠状血管内皮細胞を伸長させる分子について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
心筋傷害モデルの確立が遅れたため、26年度に実施予定であったマイクロアレーによる遺伝子発現検索が実施できなかった。また学会等での中間報告ができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
確立した心筋傷害モデルを用いてマイクロアレー法実施する。また年度末には中間結果を国際学会で報告したい。
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