研究課題/領域番号 |
25460275
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
菊地 元史 自治医科大学, 医学部, 教授 (60332988)
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研究分担者 |
東 森生 自治医科大学, 医学部, 助教 (90709643)
屋代 隆 自治医科大学, 医学部, 教授 (80119859)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 腺下垂体 / 前駆細胞 / 細胞接着 / 細胞間相互作用 |
研究実績の概要 |
下垂体前葉に前駆細胞が存在し、生理学的要求に応じて各種のホルモン産生細胞に分化するという考えが広く提唱されるようになった。しかし、どのようにして前駆細胞が終生維持されかという問題は殆ど論議されていない。我々は、ラットにおいて、1)胎仔期の未分化細胞は細胞接着因子N-カドヘリンを発現しているが、分化と共にE-カドヘリンに代わること、2)成体では、SOX2陽性細胞がE-カドヘリンを特異的に発現して他の細胞から隔離した集団をつくっていることを示し、カドヘリンによる差次的細胞接着を基にした細胞間相互作用が未分化状態維持に働いているという仮説を立てた。これまでに得られた知見からNotchシグナルが重要と考えている。本研究課題は、Ⅰ)E-カドヘリンがNotchシグナルを成立させていること、Ⅱ)Notchシグナルが、分化抑制に働く諸因子の発現や細胞分裂を制御していること、を明らかにすることを目的としている。さらに、Ⅲ)幹細胞nicheとして働く細胞と前駆細胞が別個に存在するのか、前駆細胞同士が互いに分化抑制をしているのかを明らかとしたい。 これまでに、Ⅰ)組織化学的検討によりNotchシグナル分子がE-カドヘリン陽性細胞のサブセットに限局して発現していること、さらにE-カドヘリンの働きを抑えることで、Notchシグナルの直接の標的であるHes-1の発現が減少することを示した。Ⅱ)初代培養でNotchシグナリングを阻害/促進する系を確立し、細胞分裂及びSOX2の発現が制御されることを確認した。また、標的遺伝子を網羅的に解析するためにDNAアレイを行った。Ⅲ)組織学的解析によりNotchリセプターとリガンドは、必ず共発現していることが明らかとなった。即ち、他の多くの器官と異なり、下垂体前葉では、前駆細胞同士の相互作用が未分化状態を維持するという特異な機構が存在することが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予想外に時間を要した項目もあるが、研究計画に基づいて段階的に進んでおり、特筆すべき点はない。今後の研究展開に必要となる試料も概ね得ることができている。試料解析の結果に基づき、最終年度にどこまで実験的な証明をすることができるかが鍵と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通りに作業を進める。具体的には、本年度行ったDNAマイクロアレイの解析をすることでNotchシグナルの標的遺伝子群を明らかとして、分化抑制機構を具現化したい。また、これまで組織学的に示してきた結果について、real-time PCR等によって定量的な裏付けを行う予定である。さらに、最終年度の進捗状況次第では、研究計画を一歩進めて、カドヘリンの発現をコントロールする、より上位の機構について解析を始めたい。
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