研究課題
下垂体前葉に前駆細胞が存在し、必要に応じて各種のホルモン産生細胞に分化するという考えが広く提唱されるようになった。しかし、どのようにして前駆細胞が終生維持されるのかという問題は殆ど議論されて来なかった。我々は、ラット下垂体で、胎仔期の細胞は細胞接着因子E-カドヘリンを発現しているが、分化と共にN-カドヘリンに替わること、及び、成体でも未分化(SOX2陽性)細胞は、特異的にE-カドヘリンを発現して、ホルモン産生細胞から隔離した集団をつくっていることを示し、細胞接着を基にした細胞間相互作用が前駆細胞の未分化状態維持に働いているという仮説を立てた。本研究課題では、1)Notchシグナル分子がE-カドヘリン陽性細胞のサブセットに限局して発現していること、2)Notchシグナルを阻害/促進することで細胞分裂及びSOX2の発現が制御されること、3)E-カドヘリンの働きを阻害するとNotchシグナルの標的であるHes-1の発現が減少することを示し、E-カドヘリンによる細胞接着を基にしてNotchシグナルが働き、前駆細胞の維持に関与していることを示した。加えて、組織化学的にNotchリガンドとリセプターは同じ細胞に検出されることから、他の器官と異なり下垂体前葉では前駆細胞同士の接着によって未分化状態が維持されるという特異な機構が存在することが示唆された。本年度においては、DNAマイクロアレイによって、Notchシグナルの下流で働く遺伝子を網羅的に解析した。その結果、前駆細胞の細胞分裂に関わる新規タンパク質としてT-カドヘリンが同定された。一方、NotchシグナルがSOX2発現に与える影響を調べた実験では、胎仔と成体で異なった結果が得られている。分化に対するNotchシグナルの働きは、胎仔と成体で異なっているのかも知れない。
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