研究課題/領域番号 |
25460277
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 甲子園大学 |
研究代表者 |
後藤 隆洋 甲子園大学, 栄養学部, 教授 (20135693)
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研究分担者 |
柴田 昌宏 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (10343253)
小池 正人 順天堂大学, 医学部, 教授 (80347210)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | レスベラトロール / PC12細胞 / LC3ノックダウン / オートファジー / LC3I/IIタンパク質 / ミトコンドリア / ATP合成酵素 / 細胞生存・細胞死 |
研究概要 |
今までPC12細胞を用いて、赤ワインに豊富なファイトケミカルで寿命延長効果が示唆されているレスベラトロール(RSV)の神経保護作用と抗腫瘍作用について解析してきた。PC12細胞は交感神経系の腫瘍細胞で、NGFで神経突起伸展能が誘導され神経細胞に分化するので、RSVの作用を分化度の異なる同じ細胞で解析できる利点がある。RSVは未分化(腫瘍性)細胞には障害的に作用し細胞死を促進し、分化(神経性)細胞には保護的に作用し神経突起伸展能を促進した。このメカニズムにミトコンドリアとオートファジーが関係しており、これらの機能が腫瘍細胞では低下、神経細胞では促進していることがわかった。 本研究ではオートファジーの機能変化に注目し、PC12細胞においてオートファゴソームの形成に本質的なタンパク質の遺伝子のLC3mRNAをRNAi法でノックダウンし、RSVのノックダウン細胞(未分化及び分化型)での作用を解析した。 コントロール(野生型とモック)細胞と比較して、ノックダウン細胞で以下の結果が得られた。未分化及び分化細胞共に細胞死が促進される傾向にあったが、RSVで未分化細胞は変化がなく、分化細胞は有意に細胞死が増加した。神経突起進展能はRSVの有無にかかわらず両細胞で変化がなかった。ミトコンドリアの数とミトコンドリアATP合成酵素βサブユニットの発現は未分化細胞でRSVと関係なく減少し、分化細胞ではRSVで減少した。オートファゴゾームは、LC3特にLC3IIの発現が極めて低下した状態でも出現し、未分化細胞ではRSVで変化がなかったがRSV非投与で減少し、分化細胞ではRSV非投与で変化がなかったがRSVで減少した。 以上より、LC3I/IIの発現が低下してもオートファゴゾームは少数ながら常に検出されるが、その出現変化はRSVと無関係で、LC3の一定レベルの発現がRSVの本来のPC12細胞での上記の正常な作用に必要なことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オートファジー関連遺伝子の1つであるLC3mRNAをノックダウンしたPC12細胞におけるレスベラトロールの影響については、オートファジーの活性が低下すると、未分化と分化細胞、すなわち腫瘍性細胞と神経性細胞共に障害的に作用するのではないかと予想していたが、ほぼ期待通り、レスベラトロールは両細胞で障害的に作用することがわかった。すなわちコントロール細胞と比較して、レスベラトロールは未分化細胞にはほぼ同じ効果を示したが、分化細胞には未分化細胞ほどでなないが障害的に作用することがわかった。これは、レスベラトロールの作用に、LC3が未分化(腫瘍)細胞では関与が少ないが、分化(神経)細胞では細胞の保護作用(寿命延長作用)に必要であると考えられ、またレスベラトロールはLC3を介して細胞生存・細胞死を調節している可能性もあり、このファイトケミカルの細胞への作用機序の解析について今後の研究の方向性がより明確になった。
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今後の研究の推進方策 |
LC3mRNAノックダウンPC12細胞において細胞生存及び細胞死関連タンパク質の発現がどのように影響されるか解析し、さらにレスベラトロール投与によりそれらのタンパク質の発現が変化するかを解析し、レスベラトロールの普通の細胞(LC3の発現が正常な場合)における作用メカニズムについて検討する。また予備的検索ではLC3ノックダウンPC12細胞の未分化及び分化型共に細胞死が亢進しているにもかかわらず、SIRT1(長寿関連タンパク質の1つ)の発現が増加する傾向にあるので、SIRT1mRNAのノックダウン細胞をSIRT1のsiRNAを導入して作製し、LC3の発現に加えて他の細胞生存・細胞死に関連するタンパク質の発現を解析し、LC3とSIRT1との関係(レスベラトロールの作用カスケードでどちらが上流にあるか)を明らかにする。これらの結果とLC3ノックダウン細胞の所見を併せて、正常細胞(遺伝子操作をしていない細胞)でのレスベラトロールの作用機序について検討する。その後さらにレスベラトロール以外で寿命延長効果が示唆されているファイトケミカル(冬虫夏草とその構成成分)を用いて、動物及び細胞レベルで寿命延長作用の有無さらにその分子レベルのメカニズムについて解析する予定である。
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