研究課題
現在、慢性の不整脈で最も頻度が多い心房細動は、心房内を不規則に興奮が旋回するリエントリーによって生じると考えられており、多くの心房細動は肺静脈を起源とした期外収縮が引き金になっている。肺静脈壁の内膜層は心筋細胞で占められており、動物実験においては肺静脈の心筋細胞が自動能を惹起しやすい性質を有していることが報告されている。申請者はこれまで、ラット肺静脈の心筋細胞が心房や心室の筋肉細胞とは異なり、ノルアドレナリン負荷により容易に自動能を獲得することを報告してきた。ノルアドレナリン誘発自動能は筋小胞体からの周期的なCa放出に起因し、洞房結節の自動能とは異なるメカニズムで作動している。また、ノルアドレナリン誘発自動能は肺静脈心筋においてのみ認められ、心房筋や心室筋細胞では認められない。こうした、肺静脈心筋に固有の性質は、肺静脈心筋の形態的及び電気生理学的特徴に基づいている。即ち、1)肺静脈心筋は心房筋細胞に比べて大型で、豊富なT管構造を有している、2) 肺静脈心筋細胞の静止膜電位は浅く、内向き整流Kチャネルの電流振幅が小さい。そのため、わずかな刺激であっても容易に活動電位を発生しやすい。3)T管に一致してIP3受容体及びNCX輸送体が豊富に存在する。4) 過分極によって活性化されるClチャネルが、自動能を促進させる。今年度は、ラット肺静脈心筋細胞の形態学的及び電気生理学的特性を組み込んだシミュレーションモデルを作成した。モデルは、従来の心筋細胞モデルに①α及びβアドレナリン受容体刺激の細胞内シグナル伝達過程、②Clチャネルの発現密度とキネティクス、等を加えている。そのシミュレーションモデルを用いてノルアドレナリン誘発自動能を、部分的にではあるが再現することができた。また、Clチャネルが活動電位再分極後より徐々に活性化し、自動能を促進していると考えられた。
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Biochem Biophys Res Commun
巻: 458 ページ: 584-589
10.1016/j.bbrc.2015.02.009
巻: 461 ページ: 200-205
10.1016/j.bbrc.2015.03.112.