研究課題
基盤研究(C)
これまでにTransmembrane protein 16 (TMEM16)ファミリーの一つであるTMEM16Fは、イオンチャネル機能とリン脂質スクランブラーゼ機能を併せ持つことを見出していることから、本研究においては両機能の相関関係について検討することを目的としている。平成25年度は、ヒトTMEM16Fの第1細胞内ループにあるアミノ酸残基(D408)に各種の変異導入を行い、イオンチャネル機能/スクランブラーゼ機能の変化を検討した。野生型(WT)およびD408G、D408N、D408Eの各変異体において、パッチクランプ法により細胞内Ca濃度上昇により活性化するClチャネル(CaCC)電流を測定したところ、すべての変異体におけるCaCC電流がWTと比較して増加した。またアネキシンVを用いたFACS解析によりホスファチジルセリン(PS)の細胞膜外側への露出を観測し、リン脂質スクランブラーゼ機能を比較したところ、興味深いことに、すべての変異体でWTよりスクランブラーゼ機能が亢進していた。D408E変異体は、イオンチャネル/スクランブラーゼ機能亢進の程度が小さかったことから、TMEM16F機能制御において、第1細胞内ループの負電荷が重要であることが示唆された。一方、CaCC阻害剤として報告されているニフルミン酸、NPPB、タンニン酸のTMEM16F機能に対する効果を検討したところ、これら阻害剤はTMEM16FによるCaCC電流を減少するだけでなく、TMEM16Fによるスクランブラーゼ機能も抑制した。以上の結果から、TMEM16Fによるイオンチャネル機能とスクランブラーゼ機能は、密接に連関することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度においては、第1細胞内ループの変異体およびイオンチャネル阻害剤を用いた実験により、TMEM16Fのイオンチャネル機能とスクランブラーゼ機能が相関していることを明らかにできたため。
イオンチャネル阻害剤がスクランブラーゼ機能を阻害することが明らかになったことから、平成26年度においては、イオン輸送機能とスクランブラーゼ機能の相関関係について検討する。まずは、TMEM16Aにおいて5番目と6番目の膜貫通領域内の塩基性アミノ酸残基がポア形成に重要であると考えられていることから、この変異に相当する変異をTMEM16Fに導入し、イオンチャネル機能を阻害すると、スクランブラーゼ機能がどのように変化するのかを検討する。またイオンチャネル機能とスクランブラーゼ機能の相関にイオン輸送そのものが必要であるかを検討するため、TMEM16Fを透過しないアニオン存在下においてスクランブラーゼ機能がどのように変化するのかを観測する。
端数として使用するより、平成26年度の予算と合算して使用する方が無駄とならないため。消耗品代の一部として使用する予定である。
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