研究課題/領域番号 |
25460287
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
松浦 博 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (60238962)
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研究分担者 |
小嶋 亜希子 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (50447877)
豊田 太 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (90324574)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 容量性(ストア調節性)Ca2+流入機構 / SOCE / マウス摘出灌流心 / 左心室機能 / 2-APB / LaCl3 / リアノジン受容体 / TRPC |
研究概要 |
1) 心筋虚血再灌流傷害の発生に容量性(ストア調節性)Ca2+流入機構(Store-operated Ca2+ entry, SOCE)が関わっているかを、マウス摘出灌流心を用いて検討した。ランゲンドルフ灌流下に虚血(30分間の灌流停止)および再灌流(60分間)を行い、バルーンカテーテルを用いて左心室機能(左室拡張末期圧; LVEDP、左室developed pressure; LVDP)を計測した。 i) 対照群では、再灌流60分後のLVEDPは33.7±13.4 mmHgと虚血前値(9.0±2.7 mmHg)と比較して有意に上昇し、また、LVDPは42.8±12.0 mmHgと虚血前値(80.7±22.5 mmHg)と比較して有意に低下した。この虚血再灌流傷害に起因する左心室機能低下は、SOCEの阻害剤である 2-aminoethoxydiphenyl borate (2-APB、10 μM)もしくはLaCl3(10 μM)の投与により有意に改善した。 ii) 心筋細胞のCa2+ストアである筋小胞体のリアノジン受容体(ryanodine receptor 2、RyR2)を阻害するフレカイニド(1 μM)を投与すると、虚血再灌流後の左心室機能低下を有意に改善することが明らかとなった。 2) パッチクランプ法を用いた電気生理学的検討により、マウス心室筋細胞にSOCE電流の存在を確認した。 3) 免疫細胞化学法により、マウス心室筋細胞にTRPC (transient receptor potential canonical)1、TRPC3、TRPC4の発現が認められた。 これらの実験結果により、マウス心室筋細胞にはTRPCチャネルが発現・機能しており、このTRPCチャネルを基盤とするSOCEが、心筋虚血再灌流傷害の発生に関わっていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年(平成25年)度の実験計画の主要な点は、コントロールマウスから得られた単離心臓にランゲンドルフ灌流を行い、容量性(ストア調節性)Ca2+流入機構(Store-operated Ca2+ entry, SOCE)が心筋虚血再灌流傷害に関与しているか否か、を検討することであり、この点に関しては関与を支持する実験結果が得られた。 ただ、この結果を踏まえて、虚血再灌流傷害の発生におけるSOCEの関与について、肥大心、不全心においても検討することを、本年(平成25年)度の実験計画に加えていたが、この計画に関しては結論は得られていない。現在、成体C57BL/6Jマウスを実体顕微鏡下に第2肋間より左開胸して、大動脈弓部に7-0絹糸でバンディングを行い(Transverse Aortic Constriction (TAC) 手術)、心肥大・心不全モデル動物を作製中であり、モデル動物ができ次第、コントロールマウスと同様にランゲンドルフ灌流を行い検討を行う予定である。 このように、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年(平成25年)度の正常マウスを用いた研究成果により、心筋虚血再灌流傷害の発生にSOCEが関与していることが明らかとなった。 SOCEは、心筋細胞内のCa2+ストアである筋小胞体のCa2+含量が減少することに活性化されることが知られているため、筋小胞体からのCa2+流出路であるリアノジン受容体(ryanodine receptor 2、RyR2)を阻害するフレカイニドの効果も検討した。その結果、フレカイニドも心筋虚血再灌流傷害を軽減することも明らかとなった。 この実験結果は、RyR2をブロックすることにより筋小胞体内のCa2+含量が維持され、筋小胞体内Ca2+含量の低下により惹起されるTRPCチャネルの活性化が抑制されるためと考えられた。すなわち、心筋虚血再灌流傷害に対して、TRPCチャネル阻害剤に加えてリアノジン受容体阻害剤も保護効果をもつことが明らかとなった。 今後は、正常心臓で得られたこれらの知見を、不全心・肥大心のモデル心臓でも検討をおこない、得られた成果に基づいて、臨床における心筋虚血再灌流傷害に対する治療戦略の構築に重要な情報を提供することを目指したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度の所要額(1,900,000円)をほぼ計画的(99.2%)に使用して実支出額が1,884,533円であり,その結果,少額(15,467円)の次年度使用額が発生した. 次年度使用額(15,467円)は,物品費(一般試薬)にあてる予定である.
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