研究実績の概要 |
癌細胞におけるS100蛋白質の発現とWnt/βカテニン複合体、リン酸化とシグナル系の解析:HEK293,COS-7,HCT-116癌細胞におけるS100蛋白質の発現を検討したところ、HEK293細胞ではS100A1,COS-7とHCT-116細胞ではS100A6が多量に発現していた。これらの細胞ではS100蛋白質を過剰発現してもβカテニンのリン酸化状態には影響がなかった。S100蛋白質のβカテニンシグナル系への影響を検討するため、HEK293細胞にTCFレポータージーンを導入し、ルシフェラーゼアッセイをおこなったところ、S100A6蛋白質の過剰発現はTCFのプロモータ活性を抑制することがわかった。この結果はS100A6がBCL9のTCFに対する結合を阻害し、TCF活性を抑制するという仮説を支持するものである。 癌細胞におけるS100蛋白質の発現とHsp90/PP5/cdc37複合体、リン酸化とシグナル系の解析:cdc37、Hsp90、PP5蛋白質はHEK293,COS-7,HCT-116等の癌細胞にユビキタスに発現していたが、HEK293細胞ではS100A1,COS-7とHCT-116細胞ではS100A6が多量に発現しており、S100蛋白質の癌細胞特異的発現がHsp90/PP5/cdc37複合体に異なる影響を与えることが考えられた。COS-7細胞にS100A1,S100A2,S100A6,S100A12を過剰発現させcdc37のリン酸化状態を検討したところ、S100A1>S100A2=S100A6の順でcdc37のリン酸化状態が亢進した。このことはS100蛋白質がHsp90-PP5-cdc37複合体の形成を阻害し、PP5によるcdc37の脱リン酸化を阻害した結果であると考えられる。
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