研究課題/領域番号 |
25460297
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
宮崎 裕明 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30360027)
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研究分担者 |
丸中 良典 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00127036)
新里 直美 京都学園大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00237645)
細木 誠之 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30433254)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞内Cl-濃度 / WNKキナーゼ / 細胞運動 / 細胞接着因子 / NKCC / KCC / Cl-チャネル |
研究実績の概要 |
本研究では、細胞周期進行に伴った細胞内Cl-濃度変化が細胞運動能の制御に重要な役割を果たし、癌細胞ではこのシステムが破綻することで転移能が亢進するという実験仮説の検証を行った。まず、細胞内Cl-が癌転移に関わる細胞接着因子の発現や細胞の細胞外基質への接着能に与える影響について検討を行った。まず、上皮細胞に特異的に発現し、細胞間接着に関与しているE-cadherinの発現が、低Cl-環境下において有意に減少した。また、細胞と細胞外基質との間の接着に関与しているα2-integrin発現が低Cl-環境下で減少した。コラーゲンコートしたプレートへの細胞接着能についても評価を行ったが、低Cl-環境中ではコラーゲンへの細胞接着能が有意に低下していた。細胞運動能についてwound-healing assayにより評価を行ったところ、低Cl-環境下では細胞運動能が有意に抑制を受けた。以上のことから、細胞内Cl-濃度変化が癌細胞の細胞接着能や細胞運動能に大きく影響を与えることが明らかになった。次いで、細胞内Cl-が細胞増殖や運動に関与するWNKキナーゼやSrcキナーゼの活性に与える影響について検討した。cSrcは自己リン酸化部位であるpY416のリン酸化によって活性化されることが知られいるが、細胞内Cl-が低下するとpY416のリン酸化レベルが有意に減少した。また、cSrcの細胞接着に対するシグナルカスケードの下流分子であるFAKやpaxillinのリン酸化レベルも減少していた。一方、cSrcの細胞増殖に対するシグナルカスケードの下流分子であるSTAT-3は、低Cl-環境下でリン酸化レベルが有意に減少した。また、MKN細胞からWNKキナーゼのクローニングを行い、WNKの強制発現細胞株を作製し、細胞内Cl-濃度に対する影響について検討を行った。以上の結果から、細胞内Cl-は細胞内シグナルカスケードに影響を与え、細胞増殖や細胞接着など癌細胞の生理的機能に対する重要な制御因子の一つであることが示された。
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