研究課題/領域番号 |
25460301
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
正岡 建洋 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (00317132)
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研究分担者 |
鈴木 秀和 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (70255454)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | LRP1 / 脂質代謝 / 消化管運動 / 消化管神経叢 |
研究概要 |
本研究はアポリポ蛋白Eの受容体であるLRP1とシナプス後膜に存在するPSD-95、そしてNMDA受容体、nNOSによって形成されるLRP1-NMDAR-PSD-95-nNOS複合体の消化管神経における機能についてin vivo, in vitroの各系で検討し、食物中脂質成分による上腹部症状の発現機序として脂質摂取によるアポEシグナルの増加がLRP1-NMDAR- PSD-95-nNOS複合体を介して消化管運動不全を惹起している可能性について検討することを目的とするものである。 平成25年度にはin vivoではJackson 研究所で既に樹立されたLRP1のloxPマウスを購入し、本大学の生理学研究室で作製された消化管神経を含む神経堤由来領域特異的にCre蛋白とGFP蛋白を発現させたマウス (Cell Stem Cell. 2:392-403, 2008.)との交配を開始し、Cre/loxPシステムによる神経堤由来領域特異的なLRP1遺伝子の欠失を試み、産仔を得ることができた。 in vitroではnNOSの恒常的発現が報告されているラットインスリノーマ由来のINS-1E細胞 (Mol Cell Endocrinol. 25;183:41-8, 2001)におけるLRP1遺伝子の発現を確認した。更にINS-1E細胞のLRP1遺伝子をRNA干渉でノックダウン後にNOと反応することで蛍光を発するDiaminofluorescein-2の添加によりNO産生量の定量を行ったところ、細胞内NOの有意な上昇を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LRP1のノックアウトは胚レベルで致命的になることが既に報告されており(Cell 71:411-21,1992)、消化管神経でのLRP1の機能解析のためには消化管神経特異的なLRP1の条件的ノックアウトが必要になる。既報のLRP1の条件的ノックアウトマウスの作製においては臓器特異的にCre蛋白を発現させたマウスと目的遺伝子をCreリコンビナーゼ標的配列loxPで挟んだマウスを交配させることで、臓器特異的な目的遺伝子の欠失を起こさせるCre/loxPシステムが用いられている(J Clin Invest. 101:689-95, 1998)。 平成25年度には購入したLRP1のloxPマウスと本大学の生理学研究室で作製された消化管神経を含む神経堤由来領域特異的にCre蛋白とGFP蛋白を発現させたマウス (Cell Stem Cell. 2:392-403, 2008.)を分与していただき、交配を開始し、産仔を得ることができた。 in vitroではnNOSの恒常的発現が報告されているラットインスリノーマ由来のINS-1E細胞(Mol Cell Endocrinol. 25;183:41-8, 2001)のLRP1遺伝子をRNA干渉でノックダウン後にNOと反応することで蛍光を発するDiaminofluorescein-2の添加によりNO産生量の定量を行ったところ、細胞内NOの有意な上昇を認めた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度にLRP1のloxPマウスと消化管神経を含む神経堤由来領域特異的にCre蛋白とGFP蛋白を発現させたマウス (Cell Stem Cell. 2:392-403, 2008.)の交配により、産仔を得ることができた。これらの産仔ではCre/loxPシステムによる神経堤由来領域特異的なLRP1の欠失の誘導が期待される。平成26年度はジェノタイピングによる標的遺伝子のノックアウトの有無の確認を行う。更に申請者が本邦で初めて導入したOrgan bathによる小腸や大腸の長短軸方向の長さの経時的変化及び単位時間あたりの蠕動回数の定量、胃及び空腸の筋層及び筋間神経叢の組織を用いて定量的RT-PCR法によるnNOS mRNA発現、ウエスタンブロット法によるnNOS蛋白質発現量を定量する。また、蛋白質レベルの発現量としてはAuerbach神経叢の全層標本も作成し、蛍光免疫染色及びNADPH-diaphorase染色により、NO作動性神経数の定量を行う。以上の方法により、交配によって得られたマウスの表現形の変化の有無について検討する。 in vitroではINS-1E細胞を抗nNOS抗体による免疫沈降法でnNOSを発現する成分を分離した後、抗LRP1抗体、抗PSD-95抗体、抗NMDAR抗体によるウエスタンブロット法を行い、INS-1E細胞中でのLRP1-PSD-95-nNOS-NMDAR複合体の存在を証明する。また、siRNAによるLRP1もしくはPSD-95のノックダウン時及び培養液へのアポE負荷時のNMDARの局在変化を免疫染色と細胞分画後のウエスタンブロット法で確認し、複合体形成がNMDARの膜状安定化に寄与することを証明する。
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