研究課題/領域番号 |
25460302
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
井上 華 東京医科大学, 医学部, 講師 (20390700)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | TRPM7 / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
TRPM7電流の酸化ストレスによる抑制について、その分子メカニズムを明らかにするために、酸化のターゲットとなる残基(TRPM7分子内酸化ストレスセンサー)の同定を行っている。H26年度は、TRPM7電流の酸化による抑制がMg非感受性変異体(TRPM7-S1107E)では観察されないことを明らかにした。S1107は酸性アミノ酸であるグルタミン酸(E)やアスパラギン酸(D)に変異させた場合のみならず、塩基性アミノ酸のリジン(K)あるいはアルギニン(R)に変異させた場合にも、酸化ストレスによる抑制に耐性を獲得することも明らかになった。非極性のアラニンに置換した変異体はWTと同様に酸化ストレスによって抑制されることから、1107付近の構造に大きく影響すると考えられる大きな側鎖をもつアミノ酸残基(E、D、K、R)に置換すると、TRPM7のMg感受性が増強して電流の抑制が起こると考えられる。また、分子内酸化ストレスセンサーの候補であるシステイン残基は、全36残基中の12残基についてアラニン変異体を作成し酸化ストレスに対する応答を観察し次のような結果を得た。 ①ポアループにある2つのシステイン残基(1156/1166)の変異体は、WTと同等であった。 ②S1107の近傍に3つのシステイン残基(1143/1144/1146)がクラスタを作っているが、これらのシステイン残基は単独、あるいは3つ同時に変異させても、酸化ストレスによる抑制はWTと同等であった。 ③アミノ末端側の53残基にはシステイン残基が7つ含まれている。この53残基をdeleteした変異体においても、WTと同等な抑制が観察された。 ①-③により、TRPM7分子内に存在する1/3のシステイン残基が、酸化ストレスセンサーの候補から除外された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H26年度以降の研究計画書に記した ②システイン残基36個のうち、1/3に相当する12残基を除外することに成功しているが、まだ全システイン残基についての検討を終えていない。 また、 ③酸化ストレスセンサーがシステイン残基でない場合(チロシン、リシン、アルギニン、プロリン)についての検討はまだ始められていない 以上の理由により研究計画からはやや遅れていると評価せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
候補のシステイン残基については、残り24残基の変異体を作成する前に、時間の短縮のためにスクリーニングを行うこととした。具体的には、精製用にSBPタグを付けたTRPM7を作成し、過酸化水素により酸化した後、NMMによるシステイン残基の修飾を行う。その後、TRPM7を精製し質量分析(MS/MS)により、システイン残基を同定する。同定されたシステイン残基のアラニン変異体を作成し、パッチクランプにより電流を測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたよりも樹立された培養細胞株が少なかったため、培養用消耗品が計画よりも少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度よりも樹立する培養細胞株が増えるため、消耗品量の必要量が増加すると見込まれるため、前年度からの繰り越し金は消耗品の購入に充てる。
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