TRPM7電流の参加ストレスによる抑制について、その分子メカニズムを明らかにするために、酸化のターゲットとなる残基(TRPM7分子内酸化ストレスセンサー)の同定を行っている。TRPM7はヒトとマウスで同様に酸化ストレスによって抑制されるため、H28年度はヒトとマウス共通に存在するシステイン残基(31個)をアラニンに置換して酸化ストレス応答を観察した。その結果、31個のシステイン残基のうち27個のシステインに関しては、アラニンに置換してもWTと同様に酸化ストレスによって抑制され、参加ストレスセンサーの候補から除外できた。残りの4つの変異体(C721A、C738A、C1810A、C1814A)については、アラニン置換によってTRPM7タンパク質が発現しない、あるいはタンパク質は発現しているが形質膜へ移行しないために、酸化ストレス応答を検討することができなかった。これらのシステインはセリンに置換することとし、その結果、C721S、C738Sは形質膜での機能的発現が認められ、電流を測定することができた。酸化ストレスはC721SおよびC738S電流をWTと同様に抑制することが明らかとなり、これらの2つのシステインも酸化ストレスセンサーではないことが分かった。C1810S、C1814Sは膜への移行がうまくいっていないために機能的に発現しないことが分かった。この2つのシステインはTRPM7のC末端にあるZn finger motif内に存在し、個々の構造の維持がTRPM7の機能に重要であることが示唆された。すなわち、酸化ストレスセンサーとして有力であることが分かった。
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