野生型及びATP結合部位に点突然変異を導入した変異型ABCF2(G232D及びG520D)の間で、アクチニン-4への結合能力と、ATPに対する結合能力に差があるかを定量的に検討した。
ミクロソーム分画を界面活性剤可溶なもの、不溶なものに分けて検討を行った結果、G520Dは両分画においてATP結合能が野生型よりも亢進するとともに、アクチニン-4に対する結合能も高まっていた。G232Dは界面活性剤不溶分画においてATP結合能が野生型よりも亢進しており、アクチニン-4に対する結合能の亢進も、この分画においてのみ見られた。つまり、ATP結合能が高くなるほどアクチニン-4に対しても結合しやすくなることが示唆された。ABCF2がアクチニン-4と結合しやすくなることは、低浸透圧刺激後の細胞容積調節に必須であるVSOR Clチャネルの活性化が起こりやすくなることを意味するため、本研究結果は、VSOR Clチャネルの活性化に細胞内ATPが必要であるという従来の報告に一致するものであって、アクチニン-4とABCF2の相互作用が、細胞内ATPの作用点の一つであることが示唆された。 さらに、VSOR Clチャネルの活性化機構にはGタンパク質(Gs)の関与が示されており、細胞内ATPはcAMPとしても機能することが考えられたため、野生型ABCF2とアクチニン-4との相互作用に対するcAMPの影響も検討した。その結果、界面活性剤可溶分画において両者の結合能の亢進が見られた。
以上の結果より、VSOR Clチャネル活性化における細胞内ATPの役割として、ABCF2にATPが結合することによってABCF2のアクチニン-4に対する結合能を高める効果と、cAMPとしてアクチニン-4とABCF2の相互作用を亢進させる効果の二つがあることが考えられた。
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