研究課題/領域番号 |
25460305
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
河尾 直之 近畿大学, 医学部, 助教 (70388510)
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研究分担者 |
梶 博史 近畿大学, 医学部, 教授 (90346255)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 骨軟骨再生 / 組織線溶系 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
近年、マクロファージが骨化過程において重要な役割を果たすことが示唆されている。私共は線溶系の最も重要な因子であるプラスミノゲンが骨の損傷部位へのマクロファージの集積を促進することで骨修復に寄与することを見出した。しかしながらその詳細な機構は不明である。本研究では組織線溶系の骨修復・再生過程でのマクロファージの動態および形質における役割を明らかにすることを目的とする。今年度はプラスミノゲン欠損マウス、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーター (uPA) 欠損マウス、組織型プラスミノゲンアクチベーター (tPA) 欠損マウスを用いて骨欠損後の骨修復と骨欠損部位へのマクロファージの集積と貪食能を検討した。プラスミノゲンを活性化する因子であるuPAの欠損マウスでは、野生型マウスと比較して、骨欠損4-6日後の早期のみ有意に骨修復が遅延した。一方、プラスミノゲン欠損マウスでは骨欠損4-14日後、tPA欠損マウスでは8-14日後において、野生型マウスと比較して、骨修復が遅延した。骨欠損4日後の骨修復部位におけるマクロファージの集積は、野生型マウスと比較してuPA欠損マウス、プラスミノゲン欠損マウスで減少したが、tPA欠損マウスでは変化がなかった。骨欠損部に集積したマクロファージの貪食能は野生型マウスと比較してuPA欠損マウスおよびプラスミノゲン欠損マウスで低下したが、tPA欠損マウスでは差が見られなかった。以上より、組織線溶系因子は骨修復において重要な役割を果たしているが、uPAは組織線溶系を介して骨の障害部位におけるマクロファージの集積と活性化に寄与することにより骨修復早期に重要な役割を果たすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画では骨修復部位へのマクロファージ集積に重要な線溶系因子を明らかにした後、その集積に寄与する走化因子発現における線溶系因子の役割を検討することであった。これまでに、uPAとプラスミノゲンが骨欠損部位におけるマクロファージ集積に寄与することを見出している。また、uPAは骨修復の早期において重要な役割を果たすことを見出した。現在は、遺伝子欠損マウスを用いて、骨修復部位におけるマクロファージの走化因子の発現レベルを検討しており、uPAによる骨修復早期におけるマクロファージ集積作用に関与するケモカインに関する知見が得られつつある。さらに、骨欠損部位におけるサイトカインレベルを検討し、マクロファージの活性化や表現型の解析を進めている。従って、本研究課題は当初の研究計画の通りおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた知見に基づいて、当初の研究計画に沿って以下の方策によって研究を推進する。1)uPAによる骨修復早期におけるマクロファージ集積作用に関与するケモカインを明らかにし、そのケモカインに対する中和抗体あるいは受容体の阻害剤の効果をuPA欠損マウスで検討する。さらに、骨修復部位での骨形成および血管形成に重要な成長因子やサイトカインの発現レベルを分子生物学的に検討する。2)同定したケモカインの発現におけるuPAの作用機構を分子生物学的に検討する。3) これまで得られた知見を基に、線溶系因子の調節によって骨修復・再生過程を促進する効果的な方法を検討する。ここでは、ヌードマウスに幹細胞移植をして骨軟骨再生を誘導するモデルを使用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外から輸入される研究用資材の納品が予定より遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究用資材が納品され次第、次年度使用額は全て使用する計画である。
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