再生医療のうち、骨軟骨再生は最も臨床応用が進んだ分野であるが、効率よく骨形成を促進させ、骨軟骨再生医療に応用が可能な因子やその機構の解明が強く望まれている。近年、骨化過程においてマクロファージが重要な役割を果たすことが指摘されているが、その機序の詳細は不明である。本研究課題では組織リモデリングに重要な役割を果たすことが知られる組織線溶系の骨軟骨再生過程でのマクロファージの動態および形質における役割を明らかにすることを目的とする。これまでにプラスミノゲン欠損マウスおよびウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーター (uPA) 欠損マウスでは骨欠損部位におけるマクロファージの集積が減少し、骨修復が遅延することを見出している。今年度はプラスミノゲン欠損マウス、uPA欠損マウス、組織型プラスミノゲンアクチベーター (tPA) 欠損マウスを用いて骨欠損部位へのマクロファージの集積に重要なケモアトラクタントの発現における組織線溶系の役割を検討した。骨欠損4日後において、野生型マウスの骨欠損部位では健常側と比較してマクロファージのケモアトラクタントの1つであるCCL3の発現量が増加した。プラスミノゲン欠損マウスおよびuPA欠損マウスでは骨欠損4日後においてCCL3発現量の増加が阻害されたが、tPA欠損マウスではCCL3発現に変化はなかった。また、骨欠損4日後において、CCL2とCCL4の発現量に変化はなかった。野生型マウスへのCCL3中和抗体の投与によって、骨欠損部位におけるマクロファージの集積が阻害されると共に、骨修復が遅延した。以上より、uPAおよびプラスミノゲンは骨の障害部位におけるCCL3発現を介したマクロファージの集積に寄与することにより骨修復に重要な役割を果たすことが示唆された。
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