研究課題
基盤研究(C)
低酸素が生物時計に与える効果としてショウジョウバエ羽化リズムの低酸素によるシフトが知られているため(Pittendrigh, C.S. The Neurosciences. Third Study Program. The MIT Press, Cambridge, MA, USA. 437-458, 1974)、実際の癌細胞リズムの低酸素反応性を検証した。その結果、癌細胞において低酸素暴露がリズムの位相を大きく後退させることが明らかとなった。非癌細胞(線維芽細胞)においては低酸素による位相シフトはほとんど見られず、癌細胞特有の何らかの低酸素反応が時計位相のシフトに関与していることが考えられた。pH低下は細胞時計の位相をシフトさせること(Nature Cell Biology 10:1463-1469,2008)、また癌細胞では低酸素暴露により培地のpHが低下することより、低酸素による癌細胞時計のシフトは酸の産生を介する可能性が考えられた。そのため低酸素によるpH低下を抑え、リズムへの影響を評価した。緩衝剤添加によるpH低下の抑制で低酸素による時計のシフトは減弱したため、癌細胞は低酸素に反応して自ら作り出す酸によって自らの時計をシフトさせることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
低酸素が癌細胞リズムをシフトさせることが培養細胞条件のレベルで明らかとなったことによりさらなるin vivo実験、患者検体を用いた実験を行うに当たっての作業仮説を作ることができる。
固形腫瘍内では代謝の亢進と局所循環の低下があり低酸素に加えて低pH状態にあるため、この低いpHが生物時計のリズム発振異常をもたらしている可能性がある。また、血管からの距離に応じて低酸素と低pH状態が不均一に分布しており、リズム振動も不均一になっている可能性がある。今後、実際の固形腫瘍を解析することで腫瘍組織内のリズムの多様性を明らかにしていく。
愛知医科大学で採用され赴任した。研究計画に基づいた研究を愛知医科大学で続行させるため、消耗品等を補充するために使用する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
J Biol Chem
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10.1074/jbc.M113.537191.
Indian Journal of Sleep Medicine
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