研究実績の概要 |
担癌動物の腫瘍内低酸素細胞のリズム評価に関連して、1日のうちでの様々なタイミングでの低酸素自体がマウス個体の行動リズムへ与える影響を評価する実験を行った。ヒトが急激に酸素濃度の低い環境に移動すると頭痛、消化器症状、疲労感、めまい、不眠といった症状からなる急性高山病の症状を呈することがある。また急性高山病は夜間登山ににおいて発症しやすい。そのため低酸素に対する反応には日内変動、生物時計による制御があると考えた。明暗12h:12h環境下で飼育しているマウスに1日のうち6時間ごと4つのタイミングで低酸素暴露(8%,9h)を行った。その結果Daytime(明期開始から9h)の低酸素はそれに続く暗期の活動量の上昇を抑制し活動下降期の活動量を上昇させること、Dawn(暗期の中点から9h)の低酸素はそれに続く暗期の活動量の上昇を抑制することが分かった。またNighttime(暗期開始から9h)及びDusk(明期の中点から9h)の低酸素はその後の活動量に影響を及ぼさなかった。低酸素暴露による活動パターンへの影響は暴露後12h以上続くことから生物時計の関与を考えDaytime低酸素暴露後に前脳の遺伝子の変化を調べたところ複数の時計遺伝子が変化していた。そのため時計遺伝子変異マウス(変異マウス)における低酸素反応を調べた。変異マウスにおいては恒常暗環境下において行動リズムが消失するが明暗環境下で暗期開始時にピークを持つ活動量の昼夜変動がある。このピークがDaytime低酸素により抑制されさらに暗期終了直前の活動量が上昇した。この低酸素の影響は変異マウスが恒常暗に移行し活動量のピークが消失した後ではみられなかった。これらの結果から野生型マウスでは生物時計に、変異マウスにおいては明暗サイクルから直接制御されるDaily activity rising systemの存在が考えられた。
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