POMCニューロンにおけるSIRT1とFOXO1が全身エネルギー代謝調節においてどのような役割を果たすかを解明するために、POMCニューロン特異的なSirt1とFoxo1遺伝子操作を行ったマウスの解析を行った。 昨年度までの結果と他研究者の報告から、POMCニューロンでインスリン抵抗性のFOXO1を過剰発現させると、エネルギー消費の低下を伴う肥満が惹起されることが明らかとなった。また、インスリン抵抗性FOXO1によって誘導される肥満を、SIRT1の過剰発現によって抑制できることが明らかとなった。つまり、SIRT1は遺伝子操作によるPOMCニューロンレベルでのインスリン抵抗性によって惹起される肥満を改善できることが分かった。 そこで、本年度は、Foxo1とSirt1をPOMCニューロンで欠損させたマウスの解析を試みた。しかし、POMCニューロンでのSirt1欠損では、食事性肥満を誘導させたときのみ肥満の表現型が認められること、またPOMCニューロンでのFoxo1欠損ではやせの表現型が期待されることが、他のグループからの既報で示唆された。 本年度は、POMCニューロンでのFoxo1とSirt1のダブルノックアウトマウスを交配で十分な数増やすことができず、実験の結論は年度内には出なかった。 今後、ダブルノックアウトの解析を普通食や高脂肪食などの食事負荷条件下で行うことで、昨年度までの実績である過剰発現モデルマウスの裏を取るようなダブルノックアウトマウスでの実験成果につなげたいと考えている。しかし、インスリンシグナルの促進が予想されるFoxo1ノックアウトマウスでSirt1をノックアウトしても、インスリン抵抗性が惹起されるかわからず、困難が予想される。
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