生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)ニューロンでは抑制性伝達物質であるGABAが興奮性に作用している。GnRHニューロンの制御における興奮性GABA入力の役割について個体レベルで明らかにするために、GABA入力を抑制性に維持する分子であるKCC2を発現させることにより、GnRHニューロンへのGABA入力を興奮性から抑制性に変化させることができる独自に作成した遺伝子改変マウスを用いて解析を行った。昨年度までに、このマウスでは性周期が乱れ、妊娠が認められず、卵巣には成熟卵胞が認められず、小さな卵胞がたくさん観察され、生殖機能が抑制されるという結果を得た。今年度は思春期開始への影響を検討し、出生後すぐにGABA入力を抑制性に変化させると膣開口日が1.5日早まることが明らかになった。GABA入力を抑制性にした時のGnRHニューロンの細胞生理学的な性質の変化を昨年度から引き続き解析を行い、Loose patch clamp法によりGnRHニューロンの自発発火を記録し、低濃度のGABAA受容体アゴニストであるmuscimolの作用を検討した。Muscimolにより自発発火の増加が認められたが、KCC2を発現させたマウスでは自発発火の減少がみられ、GABA入力を抑制性に変化させるとGnRHニューロンの自発発火が低下することで、生殖機能に影響を与えることが示唆され、例数を増やすことで結果が信頼できるものになった。また、オプトジェネティクス技術を用いてGnRHニューロンの活動を制御するために、GnRHニューロンにチャネルロドプシン2を発現するマウスを作成し解析を行った。GnRHニューロンからLoose patch clamp法により記録を行い、青色光で刺激したところ、活動電位を発生させることができた。青色光刺激を停止すると活動電位が引き起こされなくなった。今後はマウスの視床下部に青色LEDプローブを留置し、光刺激によりGnRHニューロンを刺激し、排卵を引き起こすことができるか検討していく。
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