研究課題
エストロゲンは排卵の誘発に必須のステロイドホルモンである。エストロゲンを合成できないエストロゲン合成酵素遺伝子欠損マウス(ArKOマウス)は全く排卵できない。しかし、特定のホルモン補充条件で刺激すると、ArKOマウスに排卵を誘発させられる。この実験系を用いて、マウスの排卵制御機構を解析した。1.エストロゲンの欠乏したArKOマウスの卵巣は卵胞刺激ホルモン(FSH)に対する感受性が野生型マウスの感受性と比べると有意に低いことが分った。野生型マウスはFSH刺激によって卵巣内のcAMP量が急激に増加する。ところが、ArKOマウスの卵巣にはFSH刺激前に既に非常に高いcAMP量が検出できた。エストロゲン欠乏は卵巣内のcAMP量を増加させ、FSHに対する感受性を低下させると考えられる。2.ArKOマウスの排卵誘導条件下の誘導効率は約60%である。野生型マウスのFSH/LH投与による排卵誘導の効率(100%)と比べると有意に低い。この効率を高める条件を探し、その根拠を解析すれば、排卵制御機構の一端を明らかにできると考えた。種々の化合物ーインスリン、プロスタグランジンE2、レプチンなどーを投与した結果、インスリンがArKOマウスの排卵効率を有意に改善させることが分った。エストロゲン欠乏の卵巣はインスリンに対する感受性が低下している可能性が考えらる。3.妊娠した野生型雌マウスを妊娠15日目から高脂肪食で飼育した。そして、高脂肪食の母親によって育てられた仔マウスを4週令時に解析した。血中の中性脂肪量は通常食で飼育した雌仔マウスのそれと比べて、顕著に増加していた。FSH/LH投与によって排卵を誘発したところ、排卵効率と排卵数は食餌条件では影響を受けないことが分かった。すなわち、妊娠後期から思春期にかけて高脂肪食を摂取し続けても正常な排卵機能が維持されると考えられる。
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