研究課題
エストロゲン受容体α型(estrogen receptor α, ERα)遺伝子構造の再解析から遺伝子のイントロン領域に従来のコーディングエクソンとは異なる選択的中間・終末エクソンが多数存在し、それら新規エクソンを用いることでC末端のリガンド結合領域を欠いた選択席スプライス変異体が生じることが判明した。それら変異体の機能解析を行ったところC末端欠損型受容体の一部はリガンドに依存せずエストロゲン応答配列を含むプロモーターに対して恒常的に転写活性化能を示した。この恒常的転写活性化能はエストロゲン受容体阻害剤に対し、不感受性を示すことから、エストロゲン感受性腫瘍の悪性化・エストロゲン感受性化やエストロゲン受容体阻害剤に対する耐性獲得に関わることが示唆された。そのため、C末端欠損型エストロゲン受容体の恒常的活性化の分子機構を解明すべく、ERα遺伝子にストップコドンを導入し、人為的にC末端領域を欠損させたERα変異体を作成し、それら変異体の機能解析を行った。エストロゲン受容体のリガンド結合領域は特徴的なヘリックス構造を持ち、11個のヘリックス(helices 1, 2-12)で構成される。人為的に作成したC末端欠損型ERα変異体のうちC末端からhelix 5以降が欠損するものは恒常的転写活性化能を示し、helix 5を含むものは転写活性化能を保持しなかった。さらに、コアクチベーターであるp300導入実験より、helix 5を欠くC末端欠損型ERα変異体は活性化状態にあり、helix 5を含む変異体は不活性状態にあることが判明した。これらから、C末端欠損型ERα変異体の恒常的活性化にはC末端からhelix 5の欠損が必要であり、helix 5が欠けることによる抑制状態の解除が恒常的転写活性化能の獲得機構であることが明らかとなった。
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