研究課題/領域番号 |
25460320
|
研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
濱田 知宏 日本医科大学, 医学部, 助教 (90312058)
|
研究分担者 |
塚原 伸治 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (90318824)
佐久間 康夫 東京医療学院大学, 保健医療学部, 教授 (70094307)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 視索前野性的二型核 / 性分化機構 / エストロゲン / 性差 / 分界条床核 |
研究実績の概要 |
性別違和に代表される脳の性分化異常が社会的な問題として注目されているが、脳の性分化機構についてはよくわかっていない。一方で視索前野性的二型核(SDN-POA)は雄で有意に大きい神経核として知られ、その雄性化には出生前後のエストロゲンが重要であることや、心の性の形成に関わる可能性が示唆されている。本研究は「エストロゲンによる細胞移動」が性分化機構の本体であるという仮説について、エストロゲン受容体遺伝子プロモータートランスジェニックラット(ER-TGラット)を活用することで、SDN-POAの性差形成過程を可視化し、その性分化機構の解明を目指すものである。 ER-TGラットのSDN-POAがGFPで特異的にラベルされる特性を生かし、胎仔脳スライス培養とタイムラプス記録を行うことで、in vitroでSDN-POAの雄性化が観察できる系を確立した。すなわち、エストロゲン投与によりSDN-POAのサイズが大きくなること、GFPでラベルされた細胞が集合することでSDN-POAが形成される過程(第1移動)と、形成されたSDN-POAの中でさらに移動する過程(第2移動)があること、後者ではα型エストロゲン受容体(ERα)を介したエストロゲンによる分散作用が重要なこと、ERαの下流に位置する分子機構では、Rac1/cofilin/actinの経路が重要であることを明らかにした。また、出生前後ラット脳切片におけるSDN-POAサイズとの比較により、in vivoとin vitroでのサイズ変化が同様であることを確認した。 以上より、SDN-POAの出生前後における性分化機構について、エストロゲン/ERα/Rac1/cofilin/actinを介した細胞の分散移動が雄性化に重要であることを明らかにした。この結果は性別違和に代表される脳の性分化異常予防法確立に向けた第一歩になることが期待される。
|