研究課題/領域番号 |
25460324
|
研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
橋本 弘史 産業医科大学, 医学部, 准教授 (10454935)
|
研究分担者 |
上田 陽一 産業医科大学, 医学部, 教授 (10232745)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 視床下部 / コルヒチン / バゾプレッシン改変緑色蛍光タンパク遺伝子 / オキシトシン赤色蛍光タンパク遺伝子 |
研究実績の概要 |
グレリン、アドレノメデュリン(AM)ファミリーなど様々な神経ペプチド(NP)が、下垂体後葉ホルモンであるバゾプレッシン(VP)およびオキシトシン(OT)分泌に関係していることが報告されている。VPは、抗利尿ホルモンとしてよく知られているが、視索上核(SON)への求心性経路の1つである嗅球にVP含有細胞が局在し、嗅上皮粘膜から入力される嗅覚情報が脳内のVP放出を介して高次脳機能に関与している可能性を示したことから(Tobin and Hashimoto et al., Nature, 2010)、VPが単なる自律神経調節ホルモンにとどまらず、情動や記憶などの社会行動の調節に関係する高次脳機能調節ペプチドであることが示唆されている。本研究では、NPを用い、嗅球におけるVPの生物学的役割および情報伝達機構の特性を、分子生物学的および電気生理学的手法を用いて明らかにすることを目的とした。 コルヒチン(CH)をラット脳室内へ投与すると、神経の軸索輸送を阻害され、細胞体の神経伝達物質が濃縮され、産生量が極微量な神経伝達物質も観察可能となる。これまでにもVP改変緑色蛍光タンパク遺伝子トランスジェニックラットを用いて、CH脳室内投与後に、SON、室傍核(PVN)、青斑核において蛍光輝度が上昇したことを報告している(Todoroki et al., Stress 2010)。平成26年度は、CHをOT赤色蛍光タンパク遺伝子トランスジェニックラットの脳室内に投与し、CH投与2日後の脳内の赤色蛍光タンパク発現を調べた。CH投与群では、コントロール群と比較し、下垂体後葉における赤色蛍光輝度は減少したが、SON、PVN、輪状核における赤色蛍光輝度は減少した。これは、神経終末ではOTが分泌され、細胞体ではOTが産生および蓄積されていることを示唆している。今後、嗅球におけるCHの作用を検討する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
セクレトニューリン、QRFP、リラキシンおよびAMファミリーなどを含め、様々な神経ペプチドをラット脳室内に投与し、作用部位の同定を行っているが、ラット嗅球においての作用のある神経ペプチドはまだ同定できていない。今後も引き続き、神経ペプチドをラット脳室内に投与し、作用部位を同定し、ラット嗅球に作用するペプチドについてVPとの関係を検討し、嗅球におけるVPの生物学的役割および情報伝達機構の特性を調べる。
|
今後の研究の推進方策 |
Wistar系成熟雄性ラット、VP‐eGFPトランスジェニックラットおよびOT-mRFP1トランスジェニックラットを用いて、神経ペプチドの脳室内もしくは嗅球内投与による作用部位を同定する。具体的には、ネンブタール麻酔下で脳室内もしくは嗅球内にカニューレを装着し、5~7日の回復期間後に覚醒下で神経ペプチド、もしくは生理食塩水を脳室内もしくは嗅球内に投与する。投与90分後にネンブタール麻酔下で灌流固定後、脳を摘出し、固定後、抗Fosタンパク抗体もしくは抗ICER抗体を用いて、嗅球のFosタンパクおよびICERタンパクの発現部位(活性化部位)を免疫組織化学的染色法により探索し、比較および検討を行う。また、同様の方法で脳室内もしくは嗅球内カニューレを装着し、回復期間後に覚醒下で神経ペプチド、もしくは生理食塩水を脳室内もしくは嗅球内に投与する。投与30分後に断頭し、脳を摘出し、急速冷凍後、脳切片を作成し、in situ ハイブリダイゼーション法により、c-fos mRNAの発現部位を検討する。また、嗅球僧帽細胞の電気活動を記録し、神経ペプチドに対する反応を検討する。注目する神経ペプチドとしては、摂食促進ペプチド(グレリン、オレキシン、QRFP)、摂食抑制ペプチド(レプチン、ネスファチン-1)、循環関連ペプチド(AMファミリー)があげられる。
|